肺膿瘍
症例の概要

レントゲン検査画像
肺膿瘍とは、肺に何らかの原因(感染、外傷、異物など)で炎症がおこったことにより、膿が溜まってしまう病気です。腫瘍ではありませんが、肺が膨らみにくくなることや破裂すると胸腔に膿が溜まってしまうことから、細菌や真菌によるその他の感染症や、呼吸器の病気に繋がるリスクがあります。抗生剤による内科治療や早期の外科切除が有効とされています。
経過および検査

CT検査画像
数日前より食欲低下がみられ、当院を受診しました。発熱および血液検査にて炎症マーカーの上昇を認め、レントゲン検査にて肺の不透過性亢進を認めました。無麻酔のCT検査から気胸および高CT値の肺を確認しました。
治療

開胸下で肺を切除しているところ 一部が壊死している
緊急手術を行い、右肺後葉の切除を実施しました。術中所見として肺に壊死および穿孔が認められ、胸腔内には膿の貯留を認めました。胸腔ドレーンを2日間設置したのち抜去、3日間の入院を経て退院しました。
術後の病理検査から病変は肺膿瘍と診断され、腫瘍性変化は認められませんでした。退院2週間後のレントゲン検査、血液検査も問題がなかったため、終診となりました。
獣医師のコメント
今回の症例では、肺膿瘍が破裂したことによって胸腔に膿が溜まってしまう膿胸という症状に進行していました。膿胸は重篤化すると呼吸困難などの命に関わる症状になりますので、早期に原因病変の切除、膿の排出、洗浄することが重要になります。