症例紹介
Case
軟部外科
胸腺腫
胸腺腫とは前縦隔(胸の中心部にある空間)に発生する胸腺上皮細胞由来の腫瘍です。胸腺はリンパ球の成熟させる働きをもつ臓器で、通常は成長とともに退縮します。胸腺腫の多くは良性腫瘍ですが、腫瘍が大きくなると周りの臓器や血管を圧迫し、呼吸障害や循環障害などの症状がみられることがあります。胸腺腫は腫瘍随伴症候群がみられることが知られており、重症筋無力症や剥奪性皮膚炎、高カルシウム血症などがあります。
膀胱腫瘍
膀胱腫瘍は尿を貯める臓器である膀胱から発生する腫瘍をいいます。初期の症状では頻尿、血尿などがみられ、腫瘍が大きくなると尿路閉塞や腫瘍の悪性度によっては他臓器に転移、浸潤がみられることがあります。犬の膀胱腫瘍は悪性であることが多く、移行上皮癌と呼ばれる癌が多く発生します。この癌は浸潤性(癌が近くの組織に広がること)が強く、粘膜面限局のものから筋層まで浸潤するものもあります。進行すると手術不適応になることが少なくなく、その場合、抗がん剤や抗炎症剤による緩和的治療になることがほとんどであるため、早期の治療が重要となります。
膀胱結石
膀胱結石とは膀胱において尿中の成分が結晶化し、結石となったものをいいます。膀胱を含む腎臓、尿管、尿道など尿の通り道にできる結石を尿路結石と呼び、これらの結石により血尿や尿路閉塞などの症状があらわれることがあります。尿路結石はその成分の違いから様々な種類があり、種類によって治療法が異なります。内科治療の有効性が認められない場合は外科手術による摘出が推奨されます。また、摘出後の成分分析の結果をもとに再発を防ぐ計画を立てていくことになります。
肺膿瘍
肺膿瘍とは、肺に何らかの原因(感染、外傷、異物など)で炎症がおこったことにより、膿が溜まってしまう病気です。腫瘍ではありませんが、肺が膨らみにくくなることや破裂すると胸腔に膿が溜まってしまうことから、細菌や真菌によるその他の感染症や、呼吸器の病気に繋がるリスクがあります。抗生剤による内科治療や早期の外科切除が有効とされています。