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犬と猫の乳腺腫瘍について┃避妊手術で予防できる病気

病院コラム 2024.06.25

乳腺腫瘍は、胸からお腹にかけて広がる乳腺に発生する腫瘍で、犬・猫ともによく遭遇する病気です。良性の場合は命に関わることはありませんが、悪性腫瘍(乳腺癌)の場合、他臓器に転移してしまうこともあります。この腫瘍は若いころに避妊手術を受けることで予防できるとされており、早期発見・早期治療と同じくらい予防が重要です。

今回は犬と猫の乳腺腫瘍について、診断方法や治療法を詳しくお伝えします。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

原因


乳腺腫瘍は特に中高齢のメスにみられ、その発症にはホルモンが深く関与していると考えられています。そのため、若いころに避妊手術をすることで発生率を大きく下げることができます。
乳腺腫瘍というと、乳がんをイメージされる飼い主様も多いかと思いますが、犬では良性と悪性が半々、猫では9割が悪性と動物種によって異なるものの、全てが悪性腫瘍(がん)というわけではありません。

 

症状


最初は胸からお腹にかけて小さいしこりが現れます。しこりは一つだけの場合もあれば、いくつかの乳腺に複数できることもあります。この段階では特に症状はありません。

しこりが大きくなると表面の皮膚が破け、痒みや痛みがあり舐めてしまい、膿が出たりきつい匂いを発生させてしまいます。

 

診断


細胞診
しこりに細い針を刺して細胞を観察することで、乳腺由来の腫瘍なのか、乳腺部分にできただけの乳腺以外が由来の腫瘍なのかを確認します。この検査は侵襲が少なく、その場で診断できますが、良性悪性の判断はできません

病理検査
腫瘍を外科的に取り除き、組織構造を確認します。
この検査は手術をしないとできません。良性悪性の判断、リンパ節転移の有無やリンパ管などへの浸潤傾向、腫瘍が全て切除できているのかなど、とても詳しく状態を把握することができます

その他、超音波検査、レントゲン検査、CT検査で腫瘍の浸潤具合や転移の有無を確認していきます。

 

治療


基本的に外科的切除が第一選択です。

転移を起こす前であれば手術のみで完治することが多いです。
また未避妊の子では、他の乳腺での新規発症を抑えるため同時に避妊手術も推奨しております。

残念ながらリンパ節転移をすでに起こしている場合、リンパ節切除のほかに、抗がん剤や放射線治療が必要になるケースもあります。

一方、炎症性乳癌といって乳腺腫瘍の中でも悪性度が特に高いものがあります。この場合は手術をしても傷がくっつかない、術後すぐに再発するなど、手術することで、より状態を悪化させてしまうリスクがあり、多くの場合で手術不適応になります。一般的な乳腺癌と異なり激しい痛みを伴うことが多いため疼痛ケアが重要になります。

手術方法は腫瘍の発生部位、発生個数、進行具合などにより局所切除から全切除まで様々な方法があります。

 

予防法やご家庭での注意点


乳腺腫瘍は未避妊の場合、年を経るにつれて発症リスクが高くなることが分かっています。そのため、最も有効な予防法は避妊手術です。下記のように、犬の場合は初回発情前、猫の場合は6ヶ月齢までに避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生率を大幅に抑えられることが分かっています。

犬の場合
・初回発情前:0.5%
・2回目の発情前:8%
・3回目以降:26%

猫の場合
・6ヶ月齢以前:9%
・7~12ヶ月齢:14%
・13~24ヶ月齢:89%

また避妊手術は、乳腺腫瘍以外にも、卵巣腫瘍や子宮蓄膿症などの病気の予防にも効果があります。

犬と猫の子宮蓄膿症についてはこちらで詳しく解説しています

すでに発症してから避妊手術を行っても期待される効果は得られないため、繁殖を考えていない場合はなるべく早めに手術を実施することをお勧めします。

犬と猫の避妊手術の重要性についてはこちらで詳しく解説しています

 

まとめ


乳腺腫瘍は、中高齢のメス犬・メス猫によく見られる病気です。悪性腫瘍が全身に転移してしまうと、残念ながら長くは生きられません。そのため、適切な時期に避妊手術を受け、確実に予防することが重要です。

※初めて受診される方は事前に問診票を記載の上ご来院ください
問診票のダウンロードはこちらから

 

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