犬の皮膚肥満細胞腫について┃皮膚にしこりがみられたら要注意!
病院コラム 2024.06.25
皮膚肥満細胞腫は犬の皮膚にできる悪性腫瘍で、皮膚腫瘍の中では最も発生率が高いものです。悪性度は様々あり、必要となる治療方法も異なります。
また、発生部位も皮膚だけでなく、様々な部位に発生するため、今回は1番発症の多い皮膚の肥満細胞腫についてお伝えします。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
肥満細胞という名前のため肥満が原因と思われがちですが全く関係ありません。哺乳類全般に元から存在する免疫細胞の一つで、細胞の中に多くの成分を含んでいます。
発生の多い犬種としてはパグやラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバーなどが言われていますが、どの犬種でも発生し、トイプードルなどの小型犬での発生もとても多いです。
症状
見た目の変化としてはしこり部分に脱毛を起こし、見た目は白やピンク色になります。痒くなってしまい、舐めたり掻いたりすることもあります。
しこりは1つだけの場合もあれば、複数のしこりができる場合もあります。中でも特徴的なのが「ダリエ徴候」と呼ばれる現象で、物理的な刺激で肥満細胞が潰れ、ヒスタミンなどが大量に放出されます。ヒスタミンは炎症を引き起こすため、急に赤く腫れたり内出血を起こしたりすることがあります。
また、肥満細胞腫は他の組織に転移することもあります。中でもリンパ節への転移が最も多いのですが、肝臓や脾臓へ転移する可能性もあり、転移した場所に応じて様々な症状が現れます。
診断
・細胞診
どの腫瘍に対しても一般的に行う検査で、しこりに細い針を刺し、細胞を観察することでどんな腫瘍なのかを観察します。
肥満細胞腫ではたくさんの顆粒を含んだ特徴的な細胞が確認できます。顆粒が観察されないパターンや細胞形態が多様な場合は悪性度が高い傾向にあります。また、周囲のリンパ節に転移することも多いため、腫瘍だけでなくリンパ節にも同様に実施します。
・病理検査
手術より切除した腫瘍の構造を見ることで、細胞診よりも詳細な診断データを得られます。また、確定的なグレード分類(悪性度の分類)はこの検査で行います。さらに、腫瘍がきちんと切除できているかなども確認します。
・遺伝子検査
特徴的な遺伝子が検出されることがあり、病理検査と一緒に行います。遺伝子が検出されるか否かで治療が異なることがあります。
このほかにも超音波検査やレントゲン検査、CT検査を行い、腫瘍の浸潤具合や転移の有無を確認していきます。
治療
基本的には外科的切除が第一選択です。
しかし、腫瘍が大きく取りきれない場合、多発・再発してしまう場合には、ステロイド剤や抗がん剤、分子標的薬などの内科的治療、もしくは放射線治療を実施します。
再発した場合や術後に内科的治療が必要と判断した場合には、手術に先立って抗がん剤や分子標的薬を投与することがあります。これは腫瘍をなくすためではなく、内科的治療に反応があるのか否かを事前に判断するためです。手術で病変がなくなってしまうと、抗がん剤が効いているのか、それとも単に再発や転移が起きていないかの判断ができないため行います。
予防法やご家庭での注意点
どんなことでも同じではありますが、ご家庭でしこりを見つけた際は、あまり様子を見ずにまずは動物病院を受診しましょう。
忙しくてなかなか来院できない場合などはしこりが大きくならないか、赤く腫れないか、引っ掻いたり舐めたりしないかなど、よく観察してあげてください。
まとめ
肥満細胞腫は、犬の皮膚で最も一般的な悪性腫瘍(がん)です。最初は小さなしこりで気づきにくいため、日ごろからスキンシップをとることが大切です。また、グレードによってはリンパ節などに転移することもあるため、早期発見・早期治療に努めましょう。
当院の腫瘍科治療は獣医腫瘍科認定医Ⅱ種の吉田直喜が中心となり、専門的な知識を生かした診療が可能です。
腫瘍に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
※初めて受診される方は事前に問診票を記載の上ご来院ください
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