犬と猫の馬尾症候群について┃後肢の歩様や尾の動かし方に異常がみられたら
病院コラム 2024.07.18
馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)は正式には変性性腰仙椎狭窄症と呼ばれ、犬と猫の腰と尻尾の間にある神経(馬尾神経)が圧迫されることで起こる神経の病気です。腰や尻尾の付け根あたりに痛みを感じるため、椎間板ヘルニア、股関節疾患、膝関節疾患、腫瘍などとの鑑別が大事になります。
今回は犬と猫の馬尾症候群について、当院での診断方法や治療法を詳しくお伝えします。
■目次
1.馬尾症候群とは
2.原因
3.症状
4.診断
5.治療
6.ご家庭での注意点
7.まとめ
馬尾症候群とは
馬尾症候群は、脊髄の末端部である馬尾神経が圧迫されることにより発生します。馬尾神経は、脊髄終末部の神経の束で、その見た目が馬の尻尾に似ていることからこの名前が付けられました。
馬尾神経は後肢や尾、膀胱、肛門などの感覚や運動をつかさどります。この神経束が圧迫されると、痛み、歩行障害、さらには麻痺に至る可能性もあります。
原因
発症原因によって、先天性と後天性に分けられます。
〈先天性〉
生まれつきの骨の奇形(椎間孔が狭いなど)が原因になります。
〈後天性〉
ハンセン2型椎間板ヘルニアが関わることが多いといわれていますが、周囲靭帯の変性、肥厚による神経の圧迫も起こっている事が多く慢性進行性に発症します。
また、高齢の大型犬に多いと言われていますが、若齢の子や小型犬(特にトイプードル)、猫での発症も多いです。
症状
馬尾症候群の症状は、進行度によって異なります。
〈発生初期〉
・腰や尻尾の付け根に触られるのを嫌がる
・お座りや散歩を嫌がる
〈進行した場合〉
・後ろ足を引きずる
・後ろ足を突っ張って歩く
・立ち上がれない
・排尿・排便障害
診断
実際の歩様、家での行動の変化などをお聞きし、神経学的検査や整形学的検査で病変の確認や他の問題がないかを確認していきます。
レントゲンでは骨の状況は確認できますが、神経の状況はわからないためCT検査、MRI検査を行い総合的に診断していきます。
治療
治療法は、保存的治療と外科的治療に分かれます。
馬尾症候群は中高齢で発症することが多いため、当院ではまず保存的治療を選択しています。実際には痛みの軽減を目的として、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、リブレラ(犬の変形性関節症による痛みを和らげる薬)、ソレンシア(猫の変形性関節症による痛みを和らげる薬)などを処方しています。
※リブレラとソレンシアについては獣医師法の裁量権の範囲内で適応外使用を行っています
外科的治療では、減圧手術(神経への圧迫を軽減させる方法)と、椎体固定術(背中の骨(椎体)が動かないように固定する方法)を組み合わせて、病気の根本的な解決を目指します。
ご家庭での注意点
後ろ足が立たない、ふらつく、走りたがらない、腰が落ちてしまうなどの症状がみられたら、早めに動物病院を受診しましょう。
また、ご自宅での様子からは判断できないこともあるため、定期健診で健康状態を詳しくチェックすることが肝心です。
まとめ
馬尾症候群は腰の部分に痛みを伴う神経の病気です。普段の生活では痛みを感じていないように見えても、実際には痛みがあるケースが多いので、定期健診で早めに発見し治療を進め、痛みを和らげていくことが重要になります。
※初めて受診される方は事前に問診票を記載の上ご来院ください
問診票のダウンロードはこちらから
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