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犬のリンパ腫について┃犬に発生するがんのうち7~24%を占める

病院コラム 2024.07.18

リンパ腫とは、リンパ球という免疫に関わる細胞が悪性化した腫瘍(がん)です。犬に発生するがんのうち7~24%を占めるともいわれています。リンパ腫にはいくつかのタイプがあり、それぞれ進行度や症状、治療法などが異なるため、正確な診断が重要です。

今回は犬のリンパ腫について、基本的な情報と当院での治療方針を詳しくお伝えします。

■目次
1.リンパ腫とは
2.リンパ腫の種類
3.症状
4.診断
5.病期分類(ステージング)
6.治療
7.ご家庭での注意点
8.まとめ

 

リンパ腫とは


リンパ腫はリンパ球のがんです。リンパ球は、血液中にある白血球の一種で、骨髄で生成され、リンパ節や脾臓、胸腺などに運ばれます。リンパ球はさらにT細胞、B細胞などに分かれ、体の外から入ってきた異物や病原体を排除する働きを担っています。

骨髄で腫瘍細胞が現れる場合は「白血病」、それ以外の場所で発症した場合は「リンパ腫」といいます。

残念ながら、現在の獣医療では根治することが非常に難しい病気です。
治療の選択肢はいくつかありますので、ご家族の方としっかりご相談させていただき、治療方針を決定していきます。

 

リンパ腫の種類


リンパ球は全身に存在している細胞なので、どこでも発症する可能性があります。なお、発症した部位により型が分かれています。

・多中心型(体表リンパ節に出てくるもの)
・消化器型(腸管に発生したもの)
・皮膚型
・その他:胸の中、肝臓、脾臓、腎臓、鼻腔などに発生します。

中高齢に多く、どの犬種にも発症しますが稀に若齢での発症もあります。

 

症状


初期にはほとんど症状が見られないか、少し食欲や元気が落ちる程度で、飼い主様が気づきにくい場合が多いです。さらにタイプによって以下のように異なる症状が現れます。

・多中心型
全身のリンパ節が腫れて、特に脇の下や首元、膝裏などを触ると、固くてゴロゴロとしたものが確認できます

・消化器型
消化管に腫瘍ができるため、外見上は目立った変化がありませんが、下痢や嘔吐といった消化器症状が現れます

・皮膚型
皮膚にしこりができたり、脱毛、潰瘍を形成します。痒みが強いため、他の皮膚疾患との鑑別が必要です

そのほかにも貧血、発熱などの症状が出ることもあります。

 

診断


血液検査や画像検査などで異常が見られた場合は、病変部に細い針を刺して細胞診を行います。この方法ではリンパ球の異常な増殖が見られ、低侵襲で確定診断が可能です。

ただし、細胞診では形態がはっきりしない場合があります。そのような場合は、病変部を一部、または全て切除し、病理検査や特殊染色、遺伝子検査などを行わなければ確定診断ができないこともあります。

 

病期分類(ステージング)


リンパ腫は進行度によって5つのステージに分類されます。

・ステージI: 1つのリンパ節または組織に限って存在する(骨髄を除く)
・ステージII:所属リンパ節に転移している
・ステージII:全身のリンパ節に転移している
・ステージIV:肝臓や脾臓にまで転移している
・ステージV:血液の異変による症状が現れ、他の臓器に転移している

これ以外に、サブステージとして以下の基準があります。

・A:全身症状がない
・B:全身症状がある

 

治療


リンパ腫は全身に現れる腫瘍なので、化学療法(抗がん剤)による治療が一般的です。当院ではUWプロトコールに沿った多剤併用療法(複数の抗がん剤を組み合わせて行う治療)を採用することが多いですが、発症部位により外科手術や放射線治療を提案する場合もあります。

病状が進行し、状態が悪くても治療することで改善することも多いです。どのような治療をしていくかは担当医としっかりと相談して決めることが重要です。

 

ご家庭での注意点


初期には異変に気付きにくいかもしれませんが、愛犬が中高齢になった場合は、半年に1回健康診断を受けましょう。

また、「最近なんだか元気がない」という場合やしこりを見つけた場合は、できるだけ早く動物病院を受診するようにしましょう。何事も早期発見と早期治療がとても大事です。

 

まとめ


犬のリンパ腫は中高齢でよく見られるがんです。抗がん剤治療が主な治療方法で、現状では根治はあまり期待できない病気ですが、発生部位によって治療反応や予後は大きく異なります。リンパ腫の診断を受けた場合、どこのリンパ腫なのか、どのような治療方法があるのかをしっかりと確認することが重要です。担当医とよく相談し、治療方針を決めていきましょう。また、定期健診などで早期発見と早期治療に努めることも大切です。

当院の腫瘍科治療は獣医腫瘍科認定医Ⅱ種の吉田直喜が中心となり、専門的な知識を生かした診療が可能です。
腫瘍に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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