【犬のパテラ手術は必要?】治療の考え方と術後の過ごし方|成功率や判断の目安も解説
病院コラム 2026.05.08
「手術をすすめられたけれど、本当に必要なのだろうか」
「今は元気に見えるし、様子を見てもいいのではないか」
愛犬が「パテラ(膝蓋骨脱臼)」と診断されたとき、このように迷われる飼い主様もいらっしゃるかと思います。実際に、パテラは同じグレードであっても症状の出方に個体差があり、判断が難しい病気のひとつです。
今回は、パテラの治療をどのように考えるべきか、手術を検討する目安、そして術後の過ごし方について解説します。

■目次
1.手術が必要かどうかの考え方|様子見でいいケースとの違い
2.ノヤ動物病院の治療の考え方|“その子に合わせて組み合わせる”理由
3.手術の流れと入院の目安
4.術後の過ごし方|回復を左右するポイント
5.まとめ|迷ったときは「その子に合った判断」を
手術が必要かどうかの考え方|様子見でいいケースとの違い
パテラの治療方針は、グレードだけで一律に決まるものではありません。実際の診療では、症状の有無や生活への影響、年齢や活動量などを総合的に判断していきます。
<様子見できるケース>
次のような場合は、すぐに手術を行わず、生活管理を中心に経過を見ることがあります。
・グレードⅠで症状がない
・普段の生活に支障が出ていない
・歩き方に大きな異常がない
このようなケースでは、体重管理や運動量の調整、必要に応じた痛みのコントロールなどを行い、関節への負担をできるだけ減らしていきます。ただし、これらはあくまで負担を軽減するための方法であり、脱臼そのものを元に戻す治療ではないため、状態の変化には注意しながら経過を見ていくことが大切です。
<手術を検討するケース>
一方で、次のような変化が見られる場合には、手術を検討することが一般的です。
・歩き方に明らかな異常がある
・スキップや脱臼の頻度が増えている
・足をかばう動きがある
・痛みが疑われる様子がある
こうしたサインは、すでに関節に負担がかかっている可能性を示しています。
なお「鳴かない=痛がっていない」と思われることもありますが、犬は痛みを表に出しにくい動物です。スキップのような歩き方や足をかばう動きは、すでに違和感や痛みがあるサインであることも少なくありません。
また、パテラがある犬では、前十字靭帯断裂が見過ごされているケースも少なくありません。そのまま経過してしまうと関節炎が進行し、その後の治療が難しくなることもあるため、気になる変化がある段階で状態を確認しておくことが大切です。
前十字靭帯断裂についてはこちらで詳しく解説しています
前十字靭帯断裂の治療法についてはこちらで詳しく解説しています
ノヤ動物病院の治療の考え方|“その子に合わせて組み合わせる”理由
パテラの手術にはいくつかの術式がありますが、どれか一つを選べばよいというものではありません。当院では、骨の形や筋肉のバランス、年齢、生活環境など、その子の状態を踏まえたうえで、複数の方法を組み合わせて治療を行っています。
大切なのは「どの術式が優れているか」ではなく「その子にとってどの組み合わせが適しているか」という視点です。この考え方により、再発のリスクを抑えながら、関節への負担をできるだけ少なくすることを目指しています。
手術の流れと入院の目安

手術と聞くと「どのように進むのだろう」「どのくらい入院が必要なのだろう」と不安に感じる飼い主様も多いかと思います。ここでは、当院での一般的な流れについてご紹介します。
▼術前の検査
手術にあたっては、血液検査やレントゲン検査などを行い、全身の状態や関節の状況を確認します。その結果を踏まえ、手術が可能かどうかを慎重に判断したうえで手術を行います。
▼手術当日
手術当日は絶食でご来院いただき、体調を確認したうえで処置を行います。
▼入院期間の目安
術後は、痛みや傷口の管理のため数日間入院していただきます。
入院期間の目安は4〜5日程度で、元気や食欲があり、腫れが落ち着き、歩行が可能な状態になれば退院となります。
退院後はご自宅での管理が回復に大きく関わるため、生活上の注意点についても事前に丁寧にご説明しています。
術後の過ごし方|回復を左右するポイント
手術の結果はグレードによって異なり、グレードⅡでは良好な経過が期待される一方、グレードが上がるほど再発のリスクも高くなると報告されています。また、術後には感染や再脱臼などのリスクもあるため、経過観察と適切なケアが重要です。
<通院と経過の目安>
術後は、約2週間後に抜糸を行い、1ヶ月後にレントゲン検査で回復状況を確認します。さらに1ヶ月後にも再度確認を行い、問題がなければ経過観察は終了となります。
<ご自宅での過ごし方のポイント>
退院後は、ご自宅での過ごし方が回復に大きく影響します。特に術後1ヶ月間は、無理をさせないことが大切です。
・安静に過ごす
術後1ヶ月間はケージ内で過ごすことを基本とし、関節が安定するまでは無理な運動を避けます。
・散歩は最小限に
術後1ヶ月間の散歩は排泄目的のみの最小限にとどめ、長時間の外出は控えます。
・滑りにくい環境を整える
フローリングにはマットを敷くなどして、足を滑らせない工夫を行います。段差の昇り降りやジャンプも絶対に避けましょう。
・運動再開の目安
術後1ヶ月の検査で問題がなければ運動量を増やしていきますが、激しい運動は3ヶ月程度控えることが望ましいとされています。
<術後に知っておきたいポイント>
特別なリハビリを行わなくても、日常生活の中で歩くこと自体が回復につながるため、無理のない範囲で自然な回復を促していきましょう。
また、脛骨粗面転移術を行った場合、数ヶ月から数年後に固定に使用したピンが緩んでくることがあります。状態に応じて抜去が必要になることもあるため、気になる様子や違和感が見られた場合は、お早めにご相談ください。
まとめ|迷ったときは「その子に合った判断」を
パテラの治療は、すべての犬に同じ方法が当てはまるものではありません。症状の出方や生活環境、年齢などによって、その子にとって適した選択は変わってきます。また、手術をするかどうかだけでなく、術後の過ごし方やその後の生活まで見据えて考えていくことも大切です。
当院では、目の前の症状だけで判断するのではなく、その子の状態やご家庭での生活も含めて、その子に合った治療方法を一緒に考えていくことを大切にしています。「このまま様子を見ていてよいのか」「手術をした方がよいのか」と迷われる場合も、まずは一度ご相談ください。現在の状態を確認したうえで、どのような選択肢があるのかを丁寧にご説明いたします。
すでに診断を受けている場合でも、セカンドオピニオンとしてご相談いただくことも可能です。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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