犬と猫の腹腔鏡手術について知ろう! ┃メリットと適応症例
病院コラム 2024.10.17
愛犬・愛猫が手術を受ける際、「お腹を開けると傷や体へのダメージが心配…」と感じる飼い主様も多いでしょう。そんな方にお勧めなのが腹腔鏡手術です。この手術は一部の病気や予防措置に適応され、お腹に小さな穴を開け、そこからカメラを入れることで、動物へのダメージを最小限にするというメリットがあります。
今回は、犬と猫の腹腔鏡手術の基本的な情報、メリット、適応症例についてお伝えします。
■目次
1.腹腔鏡手術とは? 基本的な仕組みと特徴
2.動物の腹腔鏡手術に適した症例
3.腹腔鏡手術の流れ
4.腹腔鏡手術の注意点
5.まとめ
腹腔鏡手術とは? 基本的な仕組みと特徴
腹腔鏡手術は、直径2~5mm程度の小さな穴を数か所開け、ポートと呼ばれる器具を設置します。そこから内視鏡のカメラとともに鉗子(臓器を掴むための器具)や超音波メス(超音波で止血・切開する器具)などを入れることで治療を行う手術です。穴から臓器は目視できませんが、カメラを介してお腹の中の様子をモニターで拡大し、確認することができます。
また一般的な外科手術(開腹手術)とくらべて、以下のようなメリットがあります。
・傷口が小さいので(避妊手術であれば2〜5mmの傷が3箇所)、術後の痛みが軽減される
・カメラによって視野が広くなり、拡大された臓器や肉眼では見落とす血管を鮮明に確認できる
・開腹手術よりも回復が早く、手術内容によっては日帰りも可能
・お腹の中が外の環境に曝されないので、術後の消化管への負担や感染リスクが低くなる
動物の腹腔鏡手術に適した症例
メリットがたくさんある腹腔鏡手術ですが、適応できる症例には限りがあります。以下は主な適応症例です。
・避妊手術:腹腔鏡下で卵巣や子宮を摘出し、ホルモンが関係する病気や望まない妊娠を防ぐことができます。
・潜在精巣:精巣が腹部内に留まる潜在精巣では、腫瘍化のリスクがあるため、腹腔鏡手術での精巣摘出が有効です。
・胃固定:胃捻転の予防として、特にリスクの高い大型犬の胃を固定する手術です。
・胆嚢切除:胆嚢粘液嚢腫や胆石症に対して、病状が進行する前に胆嚢を摘出することで重篤な合併症を予防します。
・膀胱結石の摘出:食事や感染によって膀胱の中にできた結石を膀胱結石といいます。排尿時に痛みを伴い、尿道が詰まってしまうおそれもあるので、手術で結石を取り除く必要があります。
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腹腔鏡手術の流れ
腹腔鏡手術は以下のような流れで行われます。
1.術前検査:血液検査やレントゲン検査を行い、手術の安全性を確認します。
2.手術前準備:手術当日は絶食していただき、お水も朝までにお済ませください。
3.手術開始:全身麻酔を施し、腹部に数か所2〜5mmの小さな穴を開けます。炭酸ガスでお腹を膨らませてカメラを挿入し、モニターを見ながら手術を行います。切開や止血には超音波メスを使用します。
4.術後処置:手術後は傷口を縫合し、麻酔が覚めるまで待ちます。
5.退院:術後の経過が良好であれば、当日中に退院可能ですが、手術内容によっては数日入院が必要です。
6.術後ケア:傷口が小さいとはいえ、抜糸するまでは激しい運動やシャンプーはお控えください。
また、ぐったりとして元気がない、傷口が膿んでいる、糸が取れてしまった、などの異変があれば、すぐに動物病院を受診してください。
腹腔鏡手術の注意点
腹腔鏡手術は動物へのダメージが少なく、多くのメリットがありますが、注意しなければいけない点もあります。
・適応できないケースもある
腹腔鏡手術は主にお腹の中の疾患に有効ですが、病変が大きい場合や複雑な状態では適応できないことがあります。
・開腹手術に切り替える場合もある
あらかじめ術前の検査で患部の状態を確認しますが、内視鏡のカメラで確認したら臓器の癒着がひどく、腹腔鏡手術では対応できない場合もあります。そういった不測の事態には、開腹手術に切り替える必要があります。
・手術費用が高額になる
特殊な機器を使用するため、ほとんどの場合、開腹手術よりも手術費用が高くなってしまいます。
・対応施設が限られている
腹腔鏡手術は専門的な技術と設備を必要とするため、対応できる施設は限られています。なお、当院では日本獣医内視鏡外科研究会に所属している獣医師がおり、腹腔鏡手術を多数経験しているため、安心してご利用ください。
当院のスタッフについてはこちら
◼️腹腔鏡下による手術についてはこちらでも詳しく解説しています
内視鏡外科手術
まとめ
腹腔鏡手術を検討する際には、そのメリットとデメリットを理解したうえで、獣医師としっかり相談することが重要です。お互いの考えをすり合わせていくことで、誤解が生まれにくくなり、より納得した治療に結び付けることができます。腹腔鏡手術は人間の医療では一般的ですが、獣医療ではまだまだ発展途上の技術です。とはいえ、最近では「動物も家族の一員」という考え方がだんだんと浸透してきて、なるべく動物に負担をかけない治療法が求められてきています。当院では全てにおいて、できるだけ動物に負担のない医療を行えるようにこれからも邁進していきます。
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