犬の潜在精巣の治療について┃腹腔鏡手術の利点と可能性
病院コラム 2024.10.17
潜在精巣とは、子犬のときに陰嚢に収まるはずの精巣がお腹の中に留まってしまう病気です。一般的には開腹手術で精巣を取り除きますが、当院ではより動物への負担を少なくするため、腹腔鏡手術を採用しています。
今回は犬の潜在精巣の基本的な情報とともに、腹腔鏡手術での治療のメリットや実際の流れについてお伝えします。
■目次
1.潜在精巣とは? 犬の健康に与える影響
2.腹腔鏡手術:潜在精巣治療の新たな選択肢とメリット
3.腹腔鏡下潜在精巣摘出術の流れ
4.腹腔鏡手術の適応と注意点
5.まとめ:潜在精巣治療における腹腔鏡手術の重要性
潜在精巣とは? 犬の健康に与える影響
精巣は出生直後は腹部内にあり、通常生後30日頃に鼡径輪を通り陰嚢に移動します(精巣下降)。しかし、一部の犬では精巣が下降せず、腹部や鼡径部に留まることがあります。この状態を潜在精巣と呼び、去勢手術を受けた犬の6.8%に潜在精巣が認められ、生後6〜12か月のオス犬の1.4%で確認されたという報告があります。
遺伝的要因が考えられており、精巣が腹部内にあると精子が正常に作られず、さらに精巣腫瘍の発生リスクが高まります。
幼少期にはこれといった症状がないのでご家庭ではなかなか気づきにくく、去勢手術時の検査で初めて発見されることもあります。治療が行われずに高齢になると、精巣が腫瘍化する可能性が高くなるため、早期発見・早期治療が重要です。
治療には開腹手術が選択されることが多いのですが、傷口を小さくして犬へのダメージを少なくするために、最近では腹腔鏡手術を採用する動物病院も増えてきています。
腹腔鏡手術:潜在精巣治療の新たな選択肢とメリット
腹腔鏡手術は、従来の開腹手術に比べて下記のようなメリットがあります。特に飼い主様と愛犬にとって、手術の負担が少なく、回復が早いことが大きな魅力です。
・傷口が小さいため術後の痛みが少ない
・拡大した視野で手術が可能
・術後の癒着が少ない
当院の腹腔鏡下による手術についてはこちらをご覧ください
腹腔鏡手術についてこちらで詳しく紹介しています
腹腔鏡下潜在精巣摘出術の流れ
腹腔鏡下潜在精巣摘出術は以下のような流れで行われます。
1.術前検査:血液検査やレントゲン検査を行い、手術の安全性を確認します。
2.手術前準備:手術当日は絶食していただき、お水も朝までにお済ませください。
3.手術開始:全身麻酔を施し、臍下に1箇所3〜5mmの小さな穴を開けます。炭酸ガスで腹部を膨らませ、カメラで精巣の位置を確認します。腹壁を追加切開し、精巣を体外に出してから超音波メスで精巣を切離します。
4.術後処置:手術後は傷口を縫合し、麻酔が覚めるまで待ちます。
5.退院:術後の経過が良好であれば、当日中に退院可能です。
6.術後ケア:傷口が小さいとはいえ、抜糸するまでは激しい運動やシャンプーはお控えください。
また、ぐったりとして元気がない、傷口が膿んでいる、糸が取れてしまった、などの異変があれば、すぐに動物病院を受診してください。
腹腔鏡手術の適応と注意点
腹腔鏡手術は、動物の痛みやダメージを最小限に抑えたい、入院期間を短くしたい、といったご希望がある方にお勧めできます。ただし、精巣が腫瘍化して巨大化している場合は開腹手術が必要になることがあります。
まとめ:潜在精巣治療における腹腔鏡手術の重要性
潜在精巣は将来的に腫瘍化する危険性があるので、早期発見・早期治療がポイントになります。治療には一般的に開腹手術が用いられますが、当院では腹腔鏡手術を導入しています。この治療法には、傷口を小さくでき、犬への負担を軽くできるというメリットがあります。ただし腹腔鏡手術は専門性が高く、場合によっては適応できないこともあるので、まずは動物病院にご相談ください。
◼️オンライン予約が始まりました!
ノヤ動物病院では、オンラインでの予約が可能になりました。スマートフォンやパソコンから24時間いつでも簡単に予約できます。
※時間帯予約になりますので、診察状況や急患対応などで時間通りにお呼びできないこともございます。あらかじめご了承ください。
ご予約はこちらから
ノヤ動物病院
経験豊富なスタッフと充実した医療設備で犬と猫の健康をトータルサポートします。
042-985-4328