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マラセチアはうつらない?┃愛犬のための完全ガイド

病院コラム 2024.11.25

「マラセチア」という名前を耳にしたことのある飼い主様も多いかと思います。これは犬の皮膚に生息する酵母の一種で、皮膚に炎症を引き起こします。しかし、マラセチアは健康な犬の皮膚にも常在しており、感染症として他の犬にうつるものではありません。そのため当院では、「なぜうつらないのに悪さをするの?」というご質問をよくいただきます。

今回はそんな飼い主様の疑問を解決すべく、発症するメカニズムに焦点を当て、どんなことに気をつければいいのかをお伝えします。

■目次
1.主な症状
2.原因
3.診断
4.治療
5.予防のためのケア
6.まとめ

 

主な症状


マラセチアによる皮膚炎では、以下のような症状が見られることがあります。

皮膚のかゆみ、赤み
皮膚のべたつき
フケ
脱毛
色素沈着
悪臭

このような症状が現れた場合は、早めに動物病院での診察を受けましょう。

 

原因


マラセチアは通常、犬の皮膚の「常在菌」として存在しています。しかし、以下の要因によって皮膚環境が変化し、マラセチアが過剰に増えると皮膚炎を引き起こすことがあります。

 

犬の体質

アトピー性皮膚炎や脂漏症のような皮膚の病気、あるいは副腎皮質機能亢進症のようなホルモンの病気を持病にもっていると、皮膚表面の環境が変化しやすくなります。健康な皮膚は外からの刺激から体を守るバリア機能がありますが、これらの病気によってその働きが弱まると、マラセチアのような常在菌であっても増殖・感染しやすくなります。
また、皮膚は適度な脂質や水分をもっていますが、加齢や遺伝的な理由で皮膚が乾燥したり、逆に脂っぽくなったりすることもあります。
こうした状況は常在菌の増殖を促すので、結果的にマラセチアによる皮膚炎が起きやすくなります。

犬のアトピー性皮膚炎についてはこちらで詳しく解説しています

 

環境要因

飼育環境も発症に影響します。例えば、暑くてジメジメしていたり、フードに脂質が多く含まれていたり、ブラッシングやシャンプーなどのスキンケアが不十分だったりすると、皮膚表面の環境が悪化して、マラセチアが増殖しやすくなります。

 

診断


マラセチアによる皮膚炎の診断には、患部から皮膚細胞を採取し、マラセチアの存在を確認する検査が行われます。

テープストリップ検査
セロハンテープを皮膚に貼り付けて細胞を採取する方法で、顔や指先などデリケートな部位にも適しています。テープに付着した細胞を顕微鏡で観察し、マラセチアが見つかれば診断につなげます。

また、マラセチア皮膚炎は他の皮膚疾患(膿皮症、皮膚糸状菌症、疥癬など)と症状が似ているため、これらを除外するために掻爬検査や毛検査も併用して診断を行います。

 

治療


マラセチアによる皮膚炎の治療には、いくつかの方法があり、症状の程度や原因に応じて異なります。
一般的には、薬用シャンプーや保湿剤を使用した「スキンケア療法」が推奨されます。この療法では、抗真菌成分が配合されたシャンプーで皮膚を洗浄し、皮脂やフケを取り除くとともに、保湿を行い皮膚の環境を整えます。
症状が重度の場合や広範囲に炎症が見られる場合には、必要に応じて抗真菌薬を使用した「薬物療法」が行われます

さらに、発症には温度や湿度などの環境要因や食事、アトピーなどの基礎疾患も関与しているためその子にあった対応が必要になります。

 

予防のためのケア


マラセチアは皮膚に常在する菌であり、完全に除去することはできませんが、皮膚環境を整えることで上手に付き合っていくことは可能です。ご家庭では、定期的なシャンプーやブラッシングで皮膚や被毛を清潔にしましょう。また、治療の項目でご説明した「生活環境の改善」も、予防につながります。

さらに、基礎疾患がある場合は、そのコントロールを行うことが予防において非常に重要です。また、サプリメントや保湿剤を活用して皮膚の状態を改善することで、マラセチアが増殖しにくい健康な皮膚環境を維持することができます。

あわせて、定期的に動物病院で診察を受け、皮膚の状態や健康状態を確認してもらうことも、マラセチアの予防には重要なポイントとなります。

 

まとめ


マラセチアは通常、健康な犬の皮膚にも存在する菌で他の犬にうつることはありませんが、体質や環境の変化によって過剰に増殖し、皮膚炎を引き起こすことがあります。日頃から愛犬の皮膚の健康に気を配り、気になることがあれば当院までお気軽にご相談ください。

当院の皮膚科についてはこちらのページで紹介しています

 

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