腹腔鏡手術で負担を軽く┃愛犬・愛猫の尿路結石
病院コラム 2024.11.25
以前の記事にて、当院では犬や猫へのダメージをできるだけ少なくするため、腹腔鏡手術を導入していることをご説明しました。腹腔鏡手術はさまざまな病気に対して適応できますが、今回はその中でも尿路結石に焦点を当ててお伝えします。尿路結石は、尿の色や頻度に変化を起こすだけでなく、結石が尿路に詰まると命に関わる危険な状態になる可能性があります。そのため、重症化する前に早期に発見し、治療を始めることが大切です。
腹腔鏡手術についてはこちらで詳しく解説しています
今回は、尿路結石がどのように発生するのか、また腹腔鏡手術による治療の利点について詳しくご紹介します。
■目次
1.尿路結石とは
2.主な症状
3.合併症
4.腹腔鏡手術の適応と注意点
5.自宅でできる予防と対策
6.まとめ
尿路結石とは
尿路とは腎臓、尿管、膀胱、尿道、これらを総称した名前になります。何らかの理由で尿路の中に石状のものが形成される病気です。石といってもいわゆる砂利ではなく、もともと尿の中に溶け込んでいた結晶成分が固まって大きくなることで、さまざまな形状の結石ができあがります。
人でも尿管結石や尿道結石があるように動物にもあります。
犬、猫共にストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石が大多数を占めます。ストルバイトは細菌感染が引き金となることが多く、特にオスに多いのが特徴です。一方、シュウ酸カルシウムはいまだにはっきりとした原因はわかっておりませんが、食事内容や代謝異常などが関与していると考えられています。
猫では品種に関する情報は少ないのですが、犬ではシーズー、ビションフリーゼ、ミニチュアシュナウザーは尿中のカルシウム濃度が高く、シュウ酸カルシウム結石ができやすいと考えられています。
猫の尿路結石症についてはこちらで詳しく解説しています
主な症状
尿路結石は固くてザラザラしているので、尿路の中を移動することで粘膜を刺激し、次のような症状が現れることがあります。
・頻尿
・血尿
・排尿痛
左の画像に見られるような滑らかな黄色の結石は比較的粘膜への刺激が少ない一方で、右の画像のように鋭利な形状の結石では粘膜が傷つきやすく、症状が悪化しやすいことが分かります。
合併症
尿路結石をそのままにしておくと、以下のような命に関わる深刻な合併症を引き起こすことがあります。
・尿道閉塞
膀胱から体外に排泄される尿路を尿道といいます。排尿時に尿と一緒に膀胱結石が流れ、そのまま排泄されてしまえば良いのですが、結石が大きく尿道の途中で詰まってしまうと尿が出なくなってしまいます。何度もトイレに行くがポタポタしか出ない、または全く出ない場合は尿道閉塞を起こしていることがあり、緊急性が高いです。
・尿管閉塞
腎臓から膀胱までの尿路を尿管といいます。シュウ酸カルシウム結石は腎臓にも結石を作ることが多いです。腎臓の結石が膀胱に流れることがあり、その際に途中の尿管で詰まってしまうと腎臓から尿の排泄ができず、水腎症になり、痛みや吐き気が出ることがあります。
・急性腎障害
尿路閉塞によって腎臓に負担がかかり、急速に腎機能が低下することがあります。
・尿毒症
尿で排泄できなかった毒素が体中に回り、けいれんなどの神経症状を招くこともあります。
これらの合併症は、尿路結石の早期発見・早期治療で防ぐことが可能です。そのため、症状が見られた時点での迅速な対応が非常に重要です。
腹腔鏡手術の適応と注意点
結石が小さく緊急性が低い場合、食事療法などの内科的治療を試みますが、内科的治療で改善しない場合や、尿道閉塞などの合併症が発生している場合には手術を検討します。特にシュウ酸カルシウム結石は食事療法で溶かすことができないため、手術が必要です。
通常は開腹手術が行われますが、当院では犬・猫への負担を軽くするためだけでなく、肉眼では見えない細かな結石の取り残しを防ぐためにも腹腔鏡手術を活用しています。腹腔鏡手術は、視野を拡大しながら細かい結石まで確認でき、取り残しを防ぐことができるため、より正確で効率的な手術が可能です。また、傷口が小さいため回復も早く、入院期間も短縮できます。ただし、結石が非常に大きい場合は開腹手術が適応されることもあります。
自宅でできる予防と対策
尿路結石を予防するためには、日常生活での工夫が重要です。まず、愛犬・愛猫が十分な水分を摂取できる環境を整えることが大切です。水飲み場には常に新鮮な水を用意し、水を飲む量が少ない場合にはウェットフードを取り入れたり、ドライフードを水でふやかして与えたりなど、食事からも水分を補給できるようにしましょう。また、気温や湿度が低くなる季節には特に水分摂取が減る傾向があるため、意識的に水分を取らせる工夫が必要です。
さらに、結石ができやすい成分やミネラルが過剰に含まれていないバランスの取れた食事を提供することが重要です。必要に応じて獣医師と相談し、結石予防のために特別に調整されたフードを検討するのも効果的です。
日々の観察も欠かせません。排尿時の様子や頻度、尿の色に変化がないか確認することが大切で、異変が見られた場合には早めに動物病院で診察を受けるようにしましょう。結石ができていても初期段階では症状が出にくいことがあるため、定期的な健康診断を受けて、結石が小さい段階での発見に努めることも予防の一環になります。
まとめ
尿路結石は犬や猫に多い泌尿器の病気であり、発見が遅れると尿道閉塞などの重篤な合併症を引き起こす危険があるので、早期発見・早期治療が肝心です。腹腔鏡手術では結石の取り残しを防ぐだけでなく、手術自体によるダメージを最小限にすることができるので、「手術をしたいけど愛犬・愛猫への影響が心配…」という飼い主様はぜひ当院までご相談ください。
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