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【手術対応可能】犬の椎間板ヘルニア完全ガイド|ダックスフンドやフレンチ・ブルドッグは要注意

病院コラム 2025.03.28

「椎間板ヘルニア」という病気を耳にしたことがある飼い主様は多いかもしれません。しかし、いざ愛犬に症状が現れたときに「どんな病気なの?」「治療にはどんな選択肢があるの?」と、不安に感じることもあるのではないでしょうか。

犬の椎間板ヘルニアは、脊髄の圧迫によって痛みや麻痺を引き起こす病気です。進行すると歩行が困難になり、場合によっては手術が必要になります。しかし、すべての動物病院で手術ができるわけではなく、手術により状態がより悪化してしまうケースもあります。

今回は、椎間板ヘルニアの症状や原因、治療法について詳しく解説し、手術が必要なケースについてもご紹介します。

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■目次
1.椎間板ヘルニアの症状
2.原因とリスク要因
3.診断方法
4.治療法と当院の手術対応
5.まとめ

 

椎間板ヘルニアの症状


症状は重症度(グレード)によって異なりますが、どのグレードであっても多くの場合、背中や首に痛みが現れることが特徴です。

・首のヘルニアの場合:痛みのために首を上げられず、上目遣いのような仕草をすることがあります。
・背中・腰のヘルニアの場合:背中を触られるのを嫌がる動きたがらないなどの様子が見られます。

 

椎間板ヘルニアの重症度は、以下のようなグレードに分類されます。

・グレード1|痛みのみ
背中や首に軽い痛みが見られる段階で、歩行や運動には支障はありません。抱っこを嫌がる、触られるのを嫌がるなどの様子が見られることがあります。

・グレード2|ふらつき
歩行に違和感が出ることがあります。後ろ足のふらつきや、階段の昇り降りを嫌がるなどの行動が見られるようになります。

・グレード3|しびれ
痛みや神経障害の影響で、自力で立ち上がることや歩くことが難しくなり、麻痺が見られます。腰のヘルニアの場合は後ろ足がうまく動かせず起立困難になります。

・グレード4|排尿困難
グレード3の状態に加え、排尿・排便にも支障が出てきます。

・グレード5|完全な麻痺
この状態になると、足をつねっても痛みを感じないなど、深部痛覚が消失します。

椎間板ヘルニアは早期の対応が鍵となります。少しでも異変を感じたら、速やかに動物病院を受診することをおすすめします。

 

原因とリスク要因


椎間板ヘルニアは、発症の仕組みによって2つのタイプに分類されます。

1. ハンセンⅠ型
髄核(椎間板の中心部)がその周りを取り囲む線維輪から飛び出し、脊髄を圧迫するタイプです。遺伝的要因が大きく関与し、特に以下の犬種は発症リスクが高いことが知られています。

ミニチュア・ダックスフンド
フレンチ・ブルドッグ
ウェルシュ・コーギー など

軟骨異栄養性(軟骨の代謝異常が起こりやすい)犬種は、生まれつき椎間板の変性が進みやすく、若いうちから発症することがあります。

2. ハンセンⅡ型
加齢による椎間板の変性が主な原因で、徐々に脊髄を圧迫するタイプです。発症までに時間がかかるため、シニア犬で多く見られます。このタイプは、特定の犬種に限らず、どの犬にも起こるおそれがあるのが特徴です。

 

避けられないリスク要因(予防が難しいもの)

・犬種(遺伝的に発症しやすい)
・加齢(椎間板が老化し、弾力を失う)

これらの要因は防ぐことが難しいため、好発犬種やシニア犬では、抱っこの仕方や日常生活の過ごし方などに気をつけましょう。

 

予防できるリスク要因

一方で、日常生活の中で気をつけることで発症リスクを軽減できる要因もあります。

肥満を防ぐ:体重増加は関節に大きな負担をかけます。
滑りやすい床を避ける:フローリングではカーペットやマットを敷くようにしましょう。
適切な抱っこをする:脇を抱えて縦に抱っこするのではなく、胸とお尻を支え、背骨と地面が平行になるように(腰が無理に反ったりしないように)抱っこしましょう。
無理なジャンプや激しい運動を避ける:高い場所への上り下りは要注意です。

これらの対策を意識することで、椎間板への負担を減らし、発症リスクを下げることにつながります。特に好発犬種を飼っている場合は、生活環境を整えることが重要になります。

 

診断方法


正確な診断には、画像診断が不可欠です。

・レントゲン検査:病変部位の特定、他の疾患との鑑別に使用します。
・神経学的検査:病変がどのあたりにあるのか、どの程度の麻痺があるのかなどを調べます。
・CT検査・MRI検査:より詳細な診断が必要な場合に実施します。

当院では、これらの検査を組み合わせ、適切な治療計画を立てています。

 

治療法と当院の手術対応


椎間板ヘルニアの治療方法は、症状の進行度によって大きく異なります。軽度であれば内科的治療が可能な場合もありますが、重度になると外科手術が必要です。適切な治療を行うことで、痛みの軽減や運動機能の回復が期待できます。

 

軽度のケース

まだ歩行が可能で、痛みがあるものの神経症状が軽い場合は、安静管理と薬物療法を中心に治療を進めます。

・内科的治療(保存療法)
 - 安静管理:ケージレストや運動制限を行い、椎間板への負担を軽減
 - 消炎鎮痛剤:炎症や痛みを抑え、生活の質(QOL)を向上
 - 神経保護剤・ビタミン剤:神経のダメージを抑え、回復をサポート

保存療法では一時的に症状が改善することがありますが、根本的な治療ではなく、再発のリスクがあるため、継続的な観察が必要です。

 

重度のケース

・外科手術による治療
痛みが強く歩行が困難、または麻痺が進行している場合は、手術による治療が推奨されます。手術は、圧迫されている脊髄を解放し、神経の損傷を防ぐことが目的です。ヘルニアが起こっている場所、形状などを考慮し術式を選択します。

・内科的治療(幹細胞療法)
高齢や基礎疾患のため手術が難しい場合、もしくは手術を行なったが治療反応が乏しい場合には幹細胞を注射することで症状の改善が見込めます。

手術の選択を含め治療法については、獣医師と相談しながら決定することが重要です。

▼代表的な手術の種類(症状や部位に応じて選択)

・片側椎弓切除術(へんそくついきゅうせっしゅつじゅつ)
背骨の一部を削って、圧迫されている脊髄のスペースを確保する手術です。広い範囲の圧迫を取り除くことができます。

・小範囲片側椎弓切除術(しょうはんいへんそくついきゅうせっしゅつじゅつ)
片側椎弓切除術の負担を抑えた方法で、より小さな範囲を削る低侵襲(体への負担が少ない)手術です。多くの場合この術式を用いています。より小さくアプローチすることで術後の脊椎の不安定性などを軽減できます。

・腹側減圧術(ふくそくげんあつじゅつ)
首の椎間板ヘルニアに対して行われる手術です。首の前側(喉の部分)からアプローチし、圧迫されている部分を取り除くことで神経の負担を軽減します。頚椎(首の骨)のヘルニアに特化した方法です。

早期に手術を行うほど、回復率が高くなる傾向にあります。特に麻痺が進んでしまうと、手術をしても完全に回復しない場合もあるため、迅速な対応が重要です。

 

当院の強み

椎間板ヘルニアの手術は、高度な技術と専門的な設備が必要なため、対応できる動物病院が限られています。当院では、画像診断専門の病院や2次診療施設で神経外科を専門に診察を行なっている獣医師と連携をとりながら、より適切な治療を行なっております。

▼当院で対応できること
高度な外科手術:経験豊富な獣医師が執刀し、安全な手術を実施します。
幹細胞治療:手術が様々な理由で難しい場合や、手術したが治療反応が乏しい場合にも治療効果が期待できます。
術後リハビリのサポート:リハビリプランを作成し、回復を最大化します。

他の病院に転院する必要がないため、愛犬と飼い主様の負担を最小限に抑えながら、スムーズに治療を進めることができます。

当院の整形外科についてのご案内はこちら

また、手術後は愛犬の回復をサポートするために、適切なリハビリが重要になります。一般的には、術後24時間~2週間以内に軽い関節の曲げ伸ばし運動を始め、経過に応じて歩行練習を取り入れていくことが推奨されます。

愛犬の状態によってリハビリの内容や進め方が異なるため、無理のない範囲で行うことが大切です。当院では、術後の経過を見ながら、ご自宅でできる簡単なリハビリの方法についてもアドバイスいたします。必要に応じて定期的な診察を受け、回復の進み具合を確認していきましょう。

 

まとめ


椎間板ヘルニアは、特にダックスフンドやフレンチ・ブルドッグなどの犬種に多く、発症すると進行が早いため、早期の診断と適切な治療が重要となります。また、手術が必要な場合、対応できる動物病院は限られているため、診断・治療の一貫対応が可能な施設を選ぶことが大切です。

当院では、検査から手術、リハビリまで総合的にサポートし、飼い主様と愛犬の不安を少しでも軽減できるように努めています。「歩き方がおかしい」「背中を触ると嫌がる」などのサインが見られたら、ぜひ一度ご相談ください。

 

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