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猫が体を舐め続ける理由とは?グルーミングの健康リスクやケア方法を獣医師が解説

病院コラム 2025.05.07

猫はよく自分の身体をペロペロと舐めますよね。こうした行動には実は意味があることをご存じでしょうか?

この行動は「グルーミング」と呼ばれ、体を清潔に保つための大切な習慣です。しかし、実はストレスや体調不良のサインとして現れることもあります。特に、グルーミングが過剰になると健康に悪影響を及ぼすこともあるため、飼い主様の気づきとケアが重要です。

今回は、猫がグルーミングをする理由と、過剰になることで生じるリスク、ご家庭でできる対策について詳しく解説します。

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■目次
1.猫がグルーミングをする理由
2.過剰グルーミングによるリスク|毛球形成や皮膚トラブルにつながることも
3.猫のグルーミング対策とケア方法|おうちでできることと受診の目安
4.まとめ

 

猫がグルーミングをする理由


グルーミングとは、猫が自分の体を舐めてきれいにする「身づくろい行動」のことです。健康な猫にとってはごく自然な行動であり、日常的に見られます。ザラザラした舌で被毛の汚れを取り除き、清潔な状態を保つだけでなく、さまざまな役割を果たしています。

猫のグルーミングには、次のような効果もあると考えられています。

体温を調節する
リラックスする
ストレスを和らげる
血行を促進して皮膚や被毛の健康を保つ

また、複数の猫を飼っている場合には、お互いに体を舐め合う「相互グルーミング」も見られます。これは信頼関係を深めるコミュニケーションの一つであり、猫同士の良好な関係を示すサインでもあります。

このように、グルーミングは猫の心身の健康を支える重要な行動です。通常であれば問題ない行動ですが、次のような理由で頻度が増えることがあります。

季節的な影響(換毛期)
季節の変わり目に被毛が生え変わる時期には、古い毛を取り除こうとしてグルーミングの頻度が自然と増える傾向があります。

ストレス
環境の変化やトイレの不備、飼い主様の生活リズムの変化など、猫はささいなことでもストレスを感じやすい動物です。そのストレスを紛らわせるために、グルーミングの回数が増えることがあります。

皮膚トラブル
かゆみ、赤み、脱毛などがあると、その部位をしきりに舐めるようになります。これは異変を自分で治そうとする自然な反応ですが、かえって悪化させてしまうこともあるため注意が必要です。

このように、猫のグルーミングにはさまざまな意味があり、健康を保つうえでも欠かせない行動です。

しかし、明らかに頻度が増えていたり、様子に違和感がある場合は、体調や心の不調が隠れていることもあります。ストレスや皮膚トラブルに加えて、膀胱炎や腰痛、外傷など、体の内外に異常があるときにも、グルーミングが過剰になることが知られています。

さらに、過剰なグルーミングが続くと、思わぬ健康トラブルにつながることもあるため注意が必要です。

 

過剰グルーミングによるリスク|毛球形成や皮膚トラブルにつながることも


グルーミングが過剰になると、次のような問題が起きやすくなります。

毛玉の形成(毛球症)
舐めた毛を飲み込むことで胃に毛玉ができるのは、ある程度自然なことですが、過剰なグルーミングにより飲み込む毛の量が増えると、毛玉が大きくなりすぎて吐き出せず、消化管閉塞を引き起こすリスクが高まります。消化管閉塞は緊急性が高く、手術が必要になるケースもあるため、そうなる前にケアをしておくことが大切です。

皮膚トラブル
同じ部位を何度も舐め続けることで、皮膚に炎症が起こり、赤み脱毛かさぶたなどの症状が出ることがあります。こうしたトラブルは悪化するとかゆみが強くなり、さらにグルーミングが増えるという悪循環につながります。

グルーミングが過剰になっているサイン

グルーミングの状態をご家庭で判断するには、次のようなサインに注意しましょう。

遊びや睡眠の時間よりもグルーミングに熱中している
吐き出す毛玉の量や回数が明らかに増えている

このような変化が見られる場合は、一度動物病院での相談をおすすめします。

 

猫のグルーミング対策とケア方法|おうちでできることと受診の目安


グルーミングが健康維持に役立つ行動とはいえ、過剰になると毛玉や皮膚トラブルなど、さまざまな問題を引き起こすことがあります。そうしたリスクを減らすためには、日頃からのケアと異変への早めの気づきがとても大切です。

ご家庭でできるケア

ブラッシング
愛猫の毛質や好みに合った道具を使って、できれば毎日ブラッシングしてあげましょう。
短毛種にはゴムブラシ、長毛種にはスリッカーブラシなど、使いやすいものを選ぶのがポイントです。抜け毛を取り除くことで、毛玉の形成リスクも大きく減らせます

ストレス管理
猫が安心して過ごせる環境を整えることも大切です。
キャットタワーで運動できるスペースを確保したり、水飲み容器やトイレを猫の好みに合わせて工夫したり、隠れられるスペースをつくってあげるのも効果的です。また、飼い主様とのふれあいの時間も、猫にとっては大きな安心材料になります。

動物病院に相談すべきタイミング

どんなに気をつけていても、グルーミングのしすぎがすでにトラブルの原因になっていることもあります。次のような様子が見られたら、早めに動物病院へご相談ください。

毛玉の嘔吐が週に何度もある
舐めすぎて皮膚に赤みや脱毛がある
特定の部位ばかりしつこく舐めている
落ち着きがなく、常に体を舐めているように見える

こうしたサインを見逃さずに、症状が軽いうちに原因を突き止め、適切な対処をすることで、大きなトラブルを未然に防ぐことにつながります。

 

まとめ


猫のグルーミングは自然な行動ですが、過剰になると毛玉や皮膚炎など、健康に関わるトラブルの原因となることもあります。日頃の観察とケアに加え、必要に応じてフードやサプリメントを活用したり、ストレス環境を整えたりすることが、愛猫の健康を守るポイントです。

「いつもと違うな?」と思ったら、早めにかかりつけの動物病院に相談することで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。愛猫の健やかな暮らしのために、ぜひ今日からできるケアを始めてみましょう。

 

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