犬の目が大きくなるのは緑内障のサイン?獣医師が原因・症状・治療法を徹底解説
病院コラム 2025.05.07
犬の緑内障は、目の中を循環する「眼房水(がんぼうすい)」の排出がうまくいかなくなることで、眼圧(目の中の圧力)が上昇し、視力に大きな影響を与える病気です。緑内障には進行が早いタイプもあり、放っておくと失明につながるおそれもあります。
愛犬の目の健康を守るためには、早期発見・早期治療が何よりも大切です。日々のスキンシップや定期的な健康診断を活用し、異変に気づいた際はすぐに動物病院へご相談ください。
今回は、犬の緑内障について原因や症状、治療法、そして予防のポイントまでわかりやすくご紹介します。
■目次
1.犬の緑内障の原因と好発犬種
2.犬の緑内障の症状と進行|目の変化に注意
3.犬の緑内障の治療法
4.犬の緑内障の予防法|早期発見と定期健診のすすめ
5.まとめ
犬の緑内障の原因と好発犬種
犬の目の中には「眼房水」と呼ばれる液体があり、角膜や水晶体などの組織に栄養を届けながら、眼圧を一定に保つ役割を担っています。しかし、何らかの理由で眼房水がうまく排出されずに溜まりすぎてしまうと、眼圧が異常に高くなり、緑内障を引き起こします。
緑内障の主な原因には、次のようなものがあります。
・遺伝的要因(原発緑内障)
特定の犬種では遺伝的に眼房水の排出経路が狭く、緑内障を発症しやすいとされています。
特に、ビーグル、アメリカン・コッカー・スパニエル、柴犬などはリスクが高いとされ、中齢(7~8歳ごろ)に多く見られますが、若い犬や高齢犬でも発症することがあります。
・他の病気が原因となるケース(続発性緑内障)
白内障やぶどう膜炎、眼の腫瘍などが原因で眼房水の排出が妨げられ、緑内障を引き起こすことがあります。
このように、緑内障には犬種や病歴によるリスクもあります。少しでも不安な点があれば早めにかかりつけの動物病院にご相談ください。
犬の緑内障の症状と進行|目の変化に注意
緑内障は進行度に応じて症状が異なります。特に初期症状は見逃されやすいため、日頃から目の変化をチェックすることが重要です。
<初期症状>
・目の充血
・目を気にしてこする
<進行した症状>
・目が白く濁って見える
・元気や食欲がなくなる
・黒目が大きく膨らむ(「牛眼(ぎゅうがん)」と呼ばれる状態)
<緊急処置が必要なサイン>
・まぶたがピクピクとけいれんする
・痛みによって目を細める
・嘔吐(強い眼圧上昇による反応)
犬の緑内障は進行が早く、1週間以内に失明するケースもあります。愛犬の様子に少しでも異変を感じたら、迷わず動物病院を受診しましょう。
犬の緑内障の治療法
緑内障の治療には、大きく分けて「点眼薬による治療」と「手術による治療」があります。症状の進み具合によって、適した方法を選ぶことが大切です。
<点眼薬治療>
もっともよく使われる治療法が、眼圧を下げるための点眼薬です。
緑内障は、目の中の水(眼房水)がたまりすぎて眼圧が高くなることで起きるため、その流れをよくしたり、作られる量を減らしたりすることで眼圧をコントロールしていきます。
▼代表的な点眼薬
・プロスタグランジン製剤:眼房水の排出を促し、眼圧を下げる
・β遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬:眼房水の産生を抑える
症状に応じて、これらを単独または組み合わせて使っていきます。
また、白内障やぶどう膜炎などの別の病気が原因になっている場合は、その治療もあわせて進めていきます。
<手術療法>
点眼薬だけではコントロールが難しい場合や、すでに視力が失われていて痛みが強いときなどには、以下のような手術を検討することもあります。
・視力をできるだけ残すことを目的とする手術
・痛みを取り除くための手術
ただし、眼科手術には高度な設備と専門的な技術が必要なため、対応できる病院は限られます。
緑内障の治療は、早い段階で始めるほど選べる方法が増え、視力を守れる可能性も高くなります。「少しおかしいかも?」と感じたら、なるべく早めに受診しましょう。
犬の緑内障の予防法|早期発見と定期健診のすすめ
緑内障は、ゆっくり進行するタイプもあれば、わずか数日で失明に至ることもある病気です。だからこそ大切なのは「少しでも早く異変に気づくこと」。
そのためには、日常のちょっとした目の変化に気づくことと、定期的な健康チェックを受けることが、予防のポイントになります。
<日々の観察ポイント>
ご家庭では次のようなポイントを意識して、愛犬の目の状態をチェックしてみてください。
☑ 目が赤くなっていないか
☑ 目が白くにごって見えないか
☑ 目をしきりにこすっていないか
☑ 普段と違う歩き方や動きをしていないか
特に、黒目が大きく膨らんで見える場合は「牛眼」と呼ばれる状態で、かなり病気が進行しているサインです。この段階になると、治療が難しくなってしまうこともあります。「気のせいかな?」と思っても、そのままにせず、気になる症状があれば早めに動物病院にご相談ください。
<定期健診の活用>
どんなに気をつけていても、初期の緑内障はご家庭では気づきにくいこともあります。だからこそ、定期健診をうまく活用することが大切です。
定期健診では、次のようなことを確認できるため、見た目では分からない異常をいち早く察知することができます。
・緑内障の原因となる白内障やぶどう膜炎が隠れていないか
・眼圧は正常かどうか
特に、リスクの高い犬種や過去に目の病気を患ったことのある犬は、年に1〜2回の眼科検診をおすすめします。
まとめ
犬の緑内障は、見た目の変化から気づける病気である一方で、進行が早く、わずか数日で失明に至ることもある重大な疾患です。ですが、早期に発見し、適切な治療を始めれば視力を保てる可能性もあります。
「最近目を細めている気がする」「目の大きさが違う?」など、普段と違う様子に気づいたら、「様子を見よう」と先延ばしにせず、なるべく早めにご相談ください。また、目に異常がない場合でも、定期的な健診で隠れた病気を早期に見つけることが大切です。
当院では、専門の診察機器を取り揃え、病気の早期発見ができるような環境を揃えております。「もしかして」と思ったら、ぜひお気軽にご相談ください。
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