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その行動、危険かも? 犬・猫の命を守る熱中症対策ガイド

病院コラム 2025.06.16

「室内にいたのに、まさか熱中症になるなんて…」そんな声が、動物病院には毎年のように寄せられます。熱中症というと炎天下の外出中に起こるイメージがありますが、実は家の中でも油断できません。

犬や猫は人よりも暑さに弱く、ほんの数時間で命に関わる状態に陥ることもあるのです。本格的な夏が来る前に、正しい知識と対策を身につけておくことが、愛犬・愛猫の命を守る第一歩になります。

今回は、熱中症の初期サイン、見落とされがちな危険シーン、そしていざというときの応急処置や日常の予防策まで、飼い主様にぜひ知っておいていただきたいポイントをまとめてご紹介します。

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■目次
1.犬・猫の熱中症とは|人より重症化しやすい理由
2.犬に多い熱中症事故の事例
3.こんな症状はすぐ病院へ|段階別のサインと応急処置のコツ
4.犬・猫の熱中症を防ぐための暑さ対策
5.まとめ

 

犬・猫の熱中症とは|人より重症化しやすい理由


人は全身の汗腺から汗をかいて体温を調整しますが、犬や猫にはその仕組みがほとんど備わっていません。そのため体内に熱がこもりやすく、熱中症を発症しやすいうえに、進行も非常に早いという特徴があります。

犬の場合

犬は体温が上がると「パンティング」と呼ばれる、口を開けてハアハアと浅く速い呼吸をすることで体を冷やそうとします。ただし、気温や湿度が高いとこの方法だけでは熱が逃げきらず、体に熱がこもってしまいます。
特にパグやフレンチ・ブルドッグのような鼻が短い犬種は、もともと呼吸がしづらいため、熱中症になりやすく注意が必要です。

猫の場合

猫は犬より暑さに強いと言われていますが、安心はできません。特に子猫や高齢の猫、持病がある猫は注意が必要です。
エアコンが効いていない部屋で長時間すごしていると、脱水状態になってしまうこともあります。また、布団やこたつに入り込んで出られなくなるなど、思わぬ事故から熱中症につながるケースもあります。

 

犬に多い熱中症事故の事例


犬の熱中症は、私たちが「これくらいなら大丈夫」と思ってしまうような日常の場面でも起こっています。

車内

「少しの間だから」とエンジンを切った車内に犬を残すのは、ほんの数分でも命の危険があります。真夏の車内はあっという間に50℃を超えることもあり、毎年のように熱中症の事故が報告されています。

室内

「エアコンをつけていたのに熱中症に?」と思われるかもしれませんが、設定温度が高すぎたり、風が届かない場所で寝ていたりすると、体に熱がこもってしまうことがあります。特に、留守番中は盲点になりがちです。

屋外

日中の散歩やお庭での遊びは、暑さと地面からの熱で体温が一気に上がる危険があります。アスファルトの温度は体感以上に高く、熱中症だけでなく、肉球のやけども心配です。

また、湿度が高ければ体は熱を逃がしにくく、熱中症のリスクは時間帯に関係なく潜んでいます。「いつも通り」に見える環境でも、こまめなチェックが大切です。

 

こんな症状はすぐ病院へ|段階別のサインと応急処置のコツ


熱中症は、早めに気づいて対処することが何より大切です。初期のサインを見逃さず、速やかに対応できるようにしておきましょう。

初期症状

次のような様子が見られたら、熱中症のはじまりかもしれません。

口を開けてハアハアと浅く速い呼吸をする(パンティング)
なんとなく元気がない
よだれの量がいつもより多い

症状が進んだ状態

症状が進行すると、次のような異変が見られるようになります。

体がふるえる
ふらついたり、まっすぐ歩けなくなる
立ち上がれなくなる
意識がぼんやりしてくる
口の中の粘膜(歯ぐきなど)が青白くなる

この段階まで進むと、命に関わる危険な状態です。すぐに動物病院を受診してください。

応急処置のポイント

応急処置は「いち早く体を冷やすこと」と「無理のない水分補給」が基本です。

涼しい場所や日陰に移動させる
首や脇の下、足のつけ根などを保冷剤や濡れタオルで冷やす
常温の水を、少しずつゆっくり飲ませる(無理に飲ませない)

やってはいけない対応

以下の行動は、かえって状態を悪化させるおそれがあります。

一気に大量の水を飲ませる
「少し様子を見よう」とそのままにする

応急処置をしたあと、たとえ元気に見えても安心はできません。必ず動物病院を受診して、獣医師の診察を受けましょう

 

犬・猫の熱中症を防ぐための暑さ対策


愛犬・愛猫を熱中症から守るには、日々のちょっとした工夫の積み重ねが大切です。以下のポイントを押さえて、暑さに負けない環境づくりを心がけましょう。

エアコンを活用した室温管理

犬や猫は自分で暑さ対策ができないため、人が意識的に環境を整えてあげる必要があります。留守中も含めて、室温が25℃前後になるようにエアコンを設定しましょう。

温湿度計で環境チェック

熱中症は気温だけでなく湿度の高さも関係します。室内の温度と湿度をこまめに確認できるよう、温湿度計を設置しておくと安心です。湿度が70%を超えると熱が体内にこもりやすくなるため、状況に応じて除湿器やエアコンの除湿機能を活用しましょう。

散歩の時間帯とコースに注意

真夏の日中、アスファルトは50℃以上になることもあり、肉球のやけどや熱中症のリスクが高まります。散歩は早朝や日が沈んだ後の涼しい時間帯に行い、日陰の多いルートを選ぶと安心です。また、散歩の前に地面を手で触って熱さを確認する習慣をつけましょう。

冷却グッズを上手に活用

冷却マット、クールベスト、ネッククーラー、保冷剤入りのベッドなど、さまざまな冷却グッズがあります。ただし、冷えすぎによる体調不良を防ぐため、使う時間や場所は工夫しましょう。愛犬・愛猫が好む素材や感触を選ぶことも大切です。

水分補給の工夫

水はいつでも清潔で新鮮な状態で飲めるようにしておくことが大切です。次のような工夫でこまめな水分補給を促してあげましょう。

・複数の場所に水飲み場を用意する
・お気に入りのボウルや材質に変えてみる
・ウェットフードを取り入れて食事からも水分を摂る

こまめな水分補給は、脱水の予防だけでなく、体温調整にもつながります。

 

まとめ


犬や猫の熱中症は、ほんの少しの油断や思い込みから命を脅かす状態に陥ることがあります。特に暑さが本格化するこれからの季節は、1日のうちのわずかな時間でも危険が潜んでいると意識することが大切です。

ご紹介したような「日々の小さな対策」でも、命を守る大きな一歩になります。そしてもし、いつもと違う様子に気づいたら「まだ大丈夫」と思わず、できるだけ早めに動物病院へご相談ください。

夏を安全に乗り切るために、今からできる準備を始めましょう。

 

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