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そのふらつき、老化ではないかも?犬・猫の歩行異常と神経系の病気を解説

病院コラム 2025.06.16

愛犬や愛猫がふらつく様子を見て「年のせいかな」「疲れているのかも」と思われる飼い主様も多いかもしれません。しかし、ふらつきは神経系の異常によって起こることもあり、見過ごすと命に関わるケースもあります。

特に、歩き方に明らかな異変がある場合や、めまい、意識の混濁、発作などを伴う場合は、早めの受診が大切です。

今回は、犬や猫のふらつきに潜む病気や注意すべき症状、動物病院で行う検査や治療、家庭でできるケアまでを詳しく解説します。

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■目次
1.ふらつきの背景にある病気とは?
2.緊急受診が必要な“ふらつき”のサイン|命に関わるケースも
3.ふらつきの原因を調べるには?動物病院で行う検査と診断
4.治療と日常ケアのポイント
5.まとめ

 

ふらつきの背景にある病気とは?


犬や猫のふらつきは、加齢や疲労によっても起こりますが、神経系のトラブルが関与していることもあります。以下は代表的な疾患です。

・前庭疾患
内耳や脳幹の異常でバランス感覚が乱れます。ふらつき以外にも、頭を傾けたり、ぐるぐる回るように歩いたりするのが特徴です。

・環軸亜脱臼
首の骨(第1頸椎と第2頸椎)の不整合により神経を圧迫します。症状が進行すると、呼吸障害や突然死につながるおそれもあるため注意が必要です。

・馬尾症候群
腰と尻尾の間にある神経(馬尾神経)が圧迫され、痛みやしびれが出る疾患です。腰が上がらずフラフラしたり、排尿・排便が困難になることもあります。

馬尾症候群についてはこちらで詳しく解説しています

・低血糖
血糖値が下がることで脳の栄養が不足し、ふらつきの原因になります。重度の場合は発作が起こるケースもあります。

・脳炎・脳腫瘍などの中枢神経疾患
中枢神経系の異常により、ふらつきが全身症状の一部として現れることがあります。

・不整脈・心不全
心拍の乱れや心臓の機能低下により、ふらつきや失神が見られることがあります。

 

緊急受診が必要な“ふらつき”のサイン|命に関わるケースも


ふらつきの裏に神経疾患がある場合、早期対応が鍵となります。次のような症状が見られたら、すぐに動物病院へご相談ください。

急に立てなくなった
意識を失った/呼びかけに反応しない
明らかにいつもと違う行動や様子
食欲や元気が落ちている

一方、加齢や一時的な疲労によるふらつきであれば、時間の経過とともに落ち着くこともありますが、自己判断は禁物です。「たぶん年のせい」と様子を見ているうちに、神経疾患が進行してしまうこともあります。違和感を覚えた段階での受診が、愛犬・愛猫の健康を守る第一歩です。

 

ふらつきの原因を調べるには?動物病院で行う検査と診断


ふらつきの原因はさまざまですが、どの病気も見た目だけでは判断がつきません。だからこそ、動物病院での検査がとても重要です。

以下のような検査を通じて、ふらつきの原因を探っていきます。

・神経学的検査
意識の状態、歩き方、反射の出方、姿勢の異常などを細かくチェックします。どの神経が障害されているかを推測し、次の検査の手がかりにします。

・画像検査(レントゲン・CT・MRIなど)
レントゲンでは骨の変形や異常を確認し、頚椎や脊椎の異常を見つけるのに役立ちます。
さらに詳しく調べる必要がある場合は、CTやMRIによって、脳や脊髄の内部まで詳細に観察します。特に腫瘍や炎症など、目には見えない病変の発見に有効です。

・血液検査
全身状態を把握するとともに、低血糖や炎症、感染症、内臓疾患などが隠れていないかを調べます。神経疾患に見えて、実は代謝異常が原因だったというケースも少なくありません。

検査によって「異常なし」とわかることもありますが、それもまた大切な情報です。ご家族が安心して今後のケアを考えるためにも、まずは正確な診断をつけることが大切です。

 

治療と日常ケアのポイント


神経疾患の治療は、原因や症状の程度、年齢や生活環境などによって最適な方法が異なります。大切なのは、決まった治療に当てはめるのではなく、その子の状態に合わせて柔軟に対応することです。

例えば、以下のような治療法が検討されます。

炎症や感染が原因の場合:お薬を使った内科的な治療
骨や脊髄に明らかな異常がある場合:外科手術
慢性疾患や手術後の回復期:リハビリや理学療法

治療を無理なく続けるためにも、獣医師と相談しながら、その子に合った治療方針を一緒に見つけていきましょう。

ご家庭でのケア

日常生活でのちょっとした工夫も、症状の悪化を防いだり、快適な生活をサポートするうえでとても重要です。

・環境整備
フローリングなどのすべりやすい床にはマットを敷く、段差にはスロープを設置する、家具の角にクッション材をつけるなど、安心して移動できる環境を整えてあげましょう。

・行動の記録
「ふらついた時間帯」「前後の様子」「食欲や元気の変化」などをメモしておくと、診察時にとても役立ちます。できればスマートフォンなどで動画を撮っておくと、より正確な情報を共有できます。

ちょっとした工夫や気づきが愛犬・愛猫の穏やかな毎日の支えになります。できることから少しずつ取り入れていきましょう。

 

まとめ


犬や猫のふらつきは一見ささいな異変に思えるかもしれませんが、その背景には神経の異常や深刻な病気が潜んでいることもあります。「なんとなく様子が変だな」と感じたときこそ、愛犬・愛猫の小さなサインに気づいてあげられる大切なタイミングです。

原因がはっきりすることで、ご家族の不安も軽くなり、適切なケアに早くつなげることができます。気になる症状が続く場合や、ご心配な点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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