猫の尿石症は冬だけじゃない!夏の“隠れ脱水”のリスクと対策を徹底解説
病院コラム 2025.07.29
猫の尿石症(尿路結石症)は、冬の水分不足が原因と思われがちですが、実は夏にも見えにくいリスクが潜んでいます。特に、エアコンの使用による“冷えすぎ”は飲水量の低下を招き、知らず知らずのうちに脱水状態になることもあるため、注意が必要です。
今回は、猫の尿石症を予防するために、飼い主様が夏に気をつけたい“隠れ脱水”の原因や、水分摂取量を増やすための工夫をご紹介します。

■目次
1.猫の水分摂取が大切な理由と飲水量の目安
2.夏場に水分不足が起こる理由とは?
3.猫の水分摂取量を増やすための工夫
4.隠れ脱水が引き起こすサインとは?|尿石症の初期症状に注意
5.まとめ
猫の水分摂取が大切な理由と飲水量の目安
猫の体にとって、水分は次のような大切な役割を担っています。
<水分の主な役割>
・血液の流れをスムーズに保つ
・尿として老廃物を体外に排出する
・細胞の健康を保つ
・体内の化学反応を助ける
こうした働きがうまくいくことで、猫は健康を維持しています。
しかし、水分が不足すると脱水状態になり、これらの機能が滞ってしまいます。脱水にまで至らなくても、尿が濃くなることで膀胱や尿道に結晶ができやすくなり、尿石症の引き金になることもあります。さらに進行すると、急性腎障害など命に関わる病気に発展するリスクもあるため注意が必要です。
<どれくらい飲めばいいの?>
猫が1日に必要とする水分量は、体重1kgあたり約50〜60mLが目安です。
例)体重5kgの猫:250〜300mL/日
体重に応じて必要な量が変わるため、飼い主様が日々の飲水量を意識して確認してあげることが大切です。
<飲水量をチェックするには?>
1頭飼いの猫であれば、水を入れた容器の減り具合を測るだけでもおおよその量がわかります。
多頭飼いの場合も、次のような方法を取り入れることで、それぞれの飲水傾向を把握しやすくなります。
・容器や給水場所をそれぞれに分ける
・飲む時間帯をずらして観察する
日頃から飲水量を把握しておくことが、愛猫の健康管理につながります。
夏場に水分不足が起こる理由とは?
「冬は乾燥しているから水分不足になりやすい」と思っている方は多いでしょう。たしかに、暖房による乾燥と気温の低下によって水分摂取が減りやすくなる冬は、脱水のリスクが高まります。
しかし、夏にも気づきにくい“隠れ脱水”が起こることがあるのです。
その原因のひとつがエアコンです。室温を快適に保つために冷房を使うことは大切ですが、設定温度が低すぎると体が冷え、喉の渇きを感じにくくなったり、動きが鈍くなって水を飲む機会が減ったりすることがあります。その結果、気づかないうちに脱水状態になっていることも。これが“隠れ脱水”です。
夏だからといって安心せず、飲水量が落ちていないか、日頃からこまめにチェックすることが大切です。
猫の水分摂取量を増やすための工夫
脱水や尿石症を防ぐには、普段から十分な水分を摂ってもらうことがポイントです。以下のような工夫を試してみましょう。
・給水方法を見直す
猫は好みに個体差があるため「どの方法なら飲んでくれるか」を探ることが大切です。ボウルの材質(陶器・金属・プラスチックなど)、設置する高さや場所を変えるだけでも飲水量が増えることがあります。
また、最近では循環式の自動給水器を使うご家庭もありますが、内部構造が複雑なため、掃除を怠るとカビや細菌が繁殖しやすくなります。導入する際は、こまめな手入れが無理なく続けられるかを考慮することが大切です。
・フードから水分を摂らせる
水をあまり飲まない場合には、食事を工夫することで水分摂取を補うこともできます。たとえば、ドライフードに少量のぬるま湯をかけてふやかす、ウェットフードを取り入れるなどの方法があります。好みに合えば、手軽に水分を摂らせることができる有効な手段です。
隠れ脱水が引き起こすサインとは?|尿石症の初期症状に注意
夏場の“隠れ脱水”が続くと、尿が濃くなり、膀胱や尿道に結晶ができやすくなります。これが進行すると「尿石症」につながるおそれがあり、放置すれば尿がまったく出なくなる「尿路閉塞」などの緊急事態に発展することもあります。
重症化を防ぐためには、初期のサインを見逃さないことが大切です。以下のような症状が見られたら、早めに動物病院へご相談ください。
・排尿の回数が増えた(何度もトイレに行く)
・トイレにいる時間が長い、何度も出たり入ったりする
・おしっこが少ない、あるいは出ていない
・排尿時にうなる・鳴くなど痛みを訴える様子がある
・血尿が見られる(うっすらピンク色に見えることも)
日頃から水分補給を意識しつつ、愛猫の様子をよく観察してあげることが、体調の変化に早く気づく大切な一歩になります。
まとめ
「尿石症は冬の病気」と思われがちですが、夏にもリスクは存在します。特に、エアコンによる冷えが原因で水分摂取量が減る“隠れ脱水”には注意が必要です。
愛猫の健康を守るためには、水分をしっかり摂れる環境づくりが大切です。給水器やボウルの見直し、ウェットフードの活用など、日々のちょっとした工夫で飲水量を増やすことができます。
そして、愛猫の様子が「いつもとちょっと違うかも」と感じたときは、早めに動物病院にご相談ください。
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