触ってわかる犬・猫の体調サイン|リンパ節の腫れと受診すべき症状
病院コラム 2025.07.29
愛犬や愛猫の体を撫でているときに「あれ、こんなところにしこりが…」と気づくことがあります。何気ないスキンシップの中で見つかる小さな変化は、時に体の不調を知らせる重要なサインかもしれません。
なかでも、首やわき、足のつけ根などにある“リンパ節”の腫れは、感染症や腫瘍など、さまざまな病気と関係していることがあります。その一方で、「そもそもリンパ節ってどこにあるの?」「触ってわかるものなの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、リンパ節の基本的なしくみや触れる場所、腫れが起こる原因、受診の目安までを詳しくご紹介します。

■目次
1.リンパ節ってどこにあるの?|基本構造と触れる場所
2.リンパ節が腫れる原因とは?代表的な疾患と特徴
3.しこりに気づいたらどうする?受診の目安とご家庭での注意点
4.まとめ
リンパ節ってどこにあるの?|基本構造と触れる場所
犬や猫の体内には、血管とは別に「リンパ管」が張り巡らされており、老組織液や細胞のかけら、病原体などを取り込む役目を果たしています。その途中にある「リンパ節」は、まるでフィルターのように異物をキャッチし、体の免疫を支える重要な器官です。
体内にはたくさんのリンパ節がありますが、手で触れて確認できる「体表リンパ節」は限られています。
・下顎リンパ節:あごの下
・浅頚リンパ節:首の付け根
・腋窩(えきか)リンパ節:わきの下
・鼠径(そけい)リンパ節:足のつけ根(股の間)
・膝下リンパ節:ひざの裏側
これらのリンパ節は、健康な状態であれば以下のような特徴があります。
▼大きさ
エンドウ豆くらい、あるいはそれより小さいことも。
小型犬では触れにくい場合もあります。
▼質感
柔らかく、適度な弾力があります。
▼可動性
周囲の組織と癒着せず、指で軽く触れると動きます。
普段のスキンシップの中で、こうした部位をやさしく触っておくと、変化に気づきやすくなります。
リンパ節が腫れる原因とは?代表的な疾患と特徴
健康なリンパ節は、意識して触らなければ気づかないほど小さなものです。しかし何らかの異常があると、ゴロゴロとしたしこりのように大きくなることがあります。
これは、リンパ節が異物や異常な細胞に反応し、免疫の働きを強めているサインです。代表的な原因として、以下のような病気が考えられます。
◆ 感染症(細菌・ウイルス・寄生虫など)
病原体に対する防御反応として、近くのリンパ節が腫れることがあります。たとえば、口腔内の感染で下顎リンパ節が腫れるといったように、感染部位に近いリンパ節が反応するのが一般的です。
軽度であれば自然に治ることもありますが、進行すると感染が全身に広がるリスクもあります。
◆ 転移性腫瘍(がんの転移)
乳腺腫瘍や肥満細胞腫などの悪性腫瘍(がん)がリンパ管を通ってリンパ節へ転移するケースです。この場合、しこりは大きくなり、周囲の組織とくっついて可動性が失われ、触っても動かなくなることがあります。
犬・猫の乳腺腫瘍についてはこちらで詳しく解説しています
犬の皮膚肥満細胞腫についてはこちらで詳しく解説しています
◆ リンパ腫(原発性の腫瘍)
なかでも「多中心型リンパ腫」では、複数の体表リンパ節が同時に腫れることが多く見られます。固くゴロゴロとしたしこりが特徴で、比較的短期間で進行する傾向があります。
◆ 免疫異常・炎症性疾患
自己免疫疾患や慢性の炎症などでも、リンパ節が腫れることがあります。
原因を特定するには血液検査や組織検査などが必要になることもあります。
リンパ節が腫れる原因には、感染症から腫瘍までさまざまなケースがあり、状態によって対応も大きく変わってきます。
しこりに気づいたらどうする?受診の目安とご家庭での注意点
愛犬・愛猫の体を撫でていて「いつもはないはずのしこり」が見つかると、戸惑ってしまう方も多いかと思います。
しこりの中には、一時的な炎症などで自然に小さくなるケースもありますが、なかには進行性の病気が関係している場合もあります。以下のような変化がみられる場合は、なるべく早めに動物病院へご相談ください。
・しこりが数日〜1週間のうちに急激に大きくなっている
・指で触っても動かず、周囲とくっついているように感る
・腫れた部分が熱をもっている
・赤みや出血がある
・複数の場所に同時にしこりができている
・元気や食欲がなく、全身の症状を伴っている
<日常的に意識したい「ご家庭での観察ポイント」>
しこりにいち早く気づくためには、日頃のスキンシップやチェックの習慣が大切です。
以下のようなポイントを意識することで、体調の小さな変化を見逃しにくくなります。
・ブラッシングやマッサージの際に、リンパ節周辺をやさしく触る
→ 下あご、首の付け根、わきの下、股の間、ひざ裏などを定期的に確認しましょう。
・「いつもと違う」と感じたらすぐに記録
→ 触った感じ、大きさ、硬さ、左右差などをメモしておくと変化に気づきやすくなります。
・スマートフォンなどで気になる場所の写真を撮っておく
→ 来院時に獣医師へ状態を伝えやすく、経過観察の参考にもなります。
リンパ節の位置やしこりの異常にいち早く気づくには、普段の体の状態を把握しておくことが役立ちます。日頃からスキンシップの時間を大切にし、愛犬・愛猫の“いつもの状態”を知っておくことが、ちょっとした変化に気づく第一歩です。
<「もう少し様子を見よう」がリスクになることも>
しこりの原因に、感染症や腫瘍といった病気が関わっている場合は、時間の経過とともに進行するリスクがあります。「悪いものじゃないかもしれないし…」とそのまま様子を見続けてしまうと、治療のタイミングを逃してしまうこともあるため注意が必要です。
特に、数日たっても改善が見られない、あるいは悪化しているように思える場合には、早めの受診をおすすめします。
まとめ
リンパ節の腫れは、犬や猫の体が発する“見えにくいサイン”のひとつです。感染症や腫瘍、免疫異常など、さまざまな病気が背景に隠れている場合もあるため、早期の受診・早期の対応が何よりも大切です。
「なんだかいつもと違う」「触ってみたらしこりのようなものがあった」そんな気づきが、愛犬・愛猫の健康を守るきっかけになります。気になる症状があれば、まずは動物病院へご相談ください。
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