犬猫の消化管寄生虫完全攻略ガイド|新しい家族を迎える前に知っておくべき5つの寄生虫と対策法
病院コラム 2025.10.22
犬や猫を新しく迎えるときに、健康チェックの中で意外と見落とされやすいのが「消化管寄生虫」です。
下痢や嘔吐などの症状を引き起こすだけでなく、放置すると体力の低下や命に関わるケースもあります。 「信頼できるブリーダーやショップ出身だから大丈夫」と思われる飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、多頭飼育の環境では寄生虫が蔓延しているケースも少なくありません。また、保護された犬や猫は、さまざまなものを食べて生き延びてきた背景から感染リスクが高いといえます。
今回は、犬猫でよくみられる5種類の消化管寄生虫を取り上げ、症状や検査・治療、家庭でできる予防策について解説します。

■目次
1.犬猫の消化管寄生虫とは?基本知識と感染経路
2.代表的な消化管寄生虫と症状
3.他の子にうつる? 多頭飼育・人への影響と感染対策
4.検査・治療・予防の流れ|長期管理が重要
5.まとめ
犬猫の消化管寄生虫とは?基本知識と感染経路
消化管寄生虫とは、犬や猫の胃や腸に寄生し、栄養を奪ったり粘膜を傷つけたりして健康に悪影響を及ぼす虫のことです。下痢や嘔吐といった消化器症状にとどまらず、栄養不良や貧血、成長不良などを引き起こす場合もあります。
代表的な感染経路には、次のようなものがあります。
・母子感染:母犬・母猫の母乳や胎盤を介して子犬・子猫に感染
・糞便や土壌を介した感染:寄生虫の卵や幼虫で汚染された便や土を口にして感染
・他の動物や昆虫を介した感染:ノミやネズミ、昆虫、ミミズなどの中間宿主を食べて感染
・周囲の犬・猫との接触を介した感染:野良犬・野良猫、あるいはブリーダーやペットショップなどの多頭飼育環境での接触や、同居動物の唾液からの感染
このように、生活環境にかかわらず、すべての犬・猫に感染リスクは存在します。そのため、新しく迎えた犬や猫は早めに検査を受けて確認しておくことが大切です。
代表的な消化管寄生虫と症状
犬や猫の消化管寄生虫は種類によって症状が異なりますが、多くに共通して下痢がみられるのが特徴です。下痢だけと軽く考えず、それぞれの寄生虫には命に関わるリスクもあることを知っておきましょう。
・回虫
子犬や子猫に多く、母乳などを介して感染します。嘔吐や下痢、発育不良などが起こり、成虫が大量に寄生すると消化管閉塞を起こすこともあります。犬回虫や猫回虫は人にもうつる危険(トキソカラ症)があるため注意が必要です。
・線虫(鉤虫・鞭虫など)
腸の粘膜に噛みついて出血させるため、下痢に加えて貧血や強いだるさを引き起こすことがあります。食欲があっても痩せていく、便が黒っぽくなるなどの変化にも注意が必要です。
・ジアルジア
水や食べ物を通して感染し、下痢を繰り返します。子犬や子猫では体力を消耗しやすく、元気や食欲が落ちて脱水につながる危険もあります。一方で、成犬や成猫では症状が出ない(不顕性感染)こともあります。また、治療薬に対して耐性があることも多く、思うように駆虫が進まないケースもしばしばみられます。
・コクシジウム(シストイソスポラ)
環境中に広く存在し、口から取り込むことで感染します。下痢や嘔吐に加え、脱水症状を招くこともあり、特に子犬・子猫では重症化しやすいのが特徴です。
・瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)
ノミを食べてしまうことで感染する寄生虫で、猫に多く見られます。少数であれば症状が目立たないこともありますが、大量に寄生すると下痢や体重減少を招き、肛門から虫の一部が出てくることもあります。人に感染することもあるため、ノミ対策が重要です。
そのほかにも、西日本を中心に報告されている「壺型吸虫(つぼがたきゅうちゅう)」や、北海道などで問題となる「エキノコックス」など、地域や環境によって注意が必要な寄生虫も存在します。
他の子にうつる? 多頭飼育・人への影響と感染対策
「同居している子にうつるのでは?」「人にも感染するの?」――寄生虫に関して、飼い主様からよくいただく質問です。実際のところ、消化管寄生虫の中には犬から犬へ、猫から猫へ、さらには人にまで感染する種類が存在します。つまり、ひとつの体にとどまらず、家族全体の健康に関わる問題になり得るのです。
では、どうすれば感染の広がりを防げるのでしょうか。日常生活で実践できるポイントをご紹介します。
・隔離する
新しく犬や猫を迎えた場合、検査が終わるまでは同居の子と接触させないようにしましょう。特に多頭飼育では「少しくらい大丈夫」と思って接触させてしまうと、寄生虫が一気に広がることがあります。
・排泄物をすぐに処理する
便には寄生虫の卵が含まれていることが多いため、トイレを清潔に保つことがとても大切です。毎回の掃除を徹底することで、家の中での再感染を防ぎやすくなります。
・必要に応じて消毒する
トイレ周りやケージなど、汚染されやすい場所は希釈した次亜塩素酸ナトリウムなどで定期的に消毒しましょう。特に子犬や子猫が過ごすスペースは、入念に消毒すると安心です。
・ノミ対策も忘れずに
瓜実条虫などはノミを介して感染するため、寄生虫対策=ノミ対策でもあります。駆虫薬や予防薬を適切に使い、外から持ち込ませない工夫が必要です。
こうした感染対策は、同居の犬猫を守るだけでなく、飼い主様ご自身やご家族の健康を守ることにもつながります。
検査・治療・予防の流れ|長期管理が重要
消化管寄生虫の診断・治療・予防には、短期間で終わるケースもあれば、根気強い管理が必要なケースもあるのが特徴です。
<検査>
基本となるのは便検査とPCR検査です。糞便の一部を採取し、卵や虫体が含まれていないかを確認します。ただし、寄生虫は便の中に常に出てくるわけではないため、1回の検査で「陰性」でも安心できません。必要に応じて繰り返し検査を行うことが確実な診断につながります。
<治療>
治療の中心は駆虫薬です。多くの場合効果がありますが、種類によっては1度の投薬では取り切れず、繰り返しの投薬や長期的な管理が必要になることもあります。
注意したいのは「下痢が治まったから大丈夫」と自己判断で投薬を中断してしまうことです。寄生虫が体内に残っていると、再び増えて症状が悪化したり、慢性化したりする危険があります。獣医師の指示に従い、最後までしっかり治療を続けることが何より大切です。
<予防>
寄生虫は身近な存在であり、完全に避けることはできません。そのため、定期的な健康診断や便検査が最も効果的な予防策です。症状がなくても検査を受けることで、早期に発見・治療ができ、重症化を防ぐことができます。
まとめ
「最近は寄生虫なんて珍しいのでは?」と思うかもしれませんが、実際にはどんな犬や猫でもかかるリスクがあります。「室内飼いだから」「信頼できる場所から迎えたから」と思っても、迎えたらまず検査で確認することが大切です。
安心して新しい家族を迎えるため、また同居の子やご家族を守るためにも、検査と定期的な予防こそが何よりの備えです。気になる症状がある場合や、これから犬・猫を迎える予定がある場合は、ぜひ早めに動物病院にご相談ください。
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