高齢犬の関節の硬さは歳のせい?考えられる病気と改善の可能性
病院コラム 2025.10.22
シニア期の愛犬に対して「最近お散歩を嫌がるようになった」「動きがぎこちなくなってきた」と感じることはありませんか?
こうした変化を「年齢のせい」と考える飼い主様も少なくありませんが、実際には関節や神経の病気が隠れているケースもあります。原因を正しく突き止め、適切な治療やケアを行えば改善が期待できることも多いため、早めに動物病院に相談することが大切です。
今回は、高齢犬にみられる関節の硬さや足腰の不調について、考えられる病気と改善のための取り組みをご紹介します。

■目次
1.高齢犬にみられる主な症状と原因疾患
2.動物病院での診断の流れ
3.治療とリハビリテーション
4.自宅でできる工夫と生活環境の整え方
5.まとめ
高齢犬にみられる主な症状と原因疾患
高齢犬で足腰の不調が出るとき、次のようなサインが見られることがあります。
・足の関節が硬く曲がりにくい
・後ろ足を投げ出すような座り方をする
・足が広がったまま寝る姿勢が増える
・歩き方が変わり、ぎこちなくなる
・足がうまく動かず、立ち上がりに時間がかかる
年齢を重ねることで、筋肉が痩せたり体が硬くなったりするなど、自然な変化が見られることもあります。しかし、こうしたサインの背景には病気が隠れていることも多いため注意が必要です。
これらの変化の背景として考えられる主な疾患には、次のようなものがあります。
・関節炎(変形性関節症)
加齢や肥満、遺伝などによって関節軟骨がすり減り、炎症や痛みを生じます。
・神経疾患
代表的な神経疾患として椎間板ヘルニアがあり、これには2つのタイプがあります。
ハンセンⅠ型では椎間板が急に飛び出すことで、背中や腰に強い痛みを伴い、進行すると足の麻痺につながることがあります。一方、ハンセンⅡ型はゆっくりと進行するタイプで、強い痛みを伴わずに麻痺だけが出てくる場合もあります。
また、腫瘍などで神経が圧迫・障害されると、足の動きが鈍くなることもあります。
・内科疾患に伴う虚弱
慢性腎臓病が進行すると、尿毒症によって筋肉のこわばりやけいれん、さらには神経症状が表れることがあります。また、代謝異常が起こると同様に足腰の不調につながるケースもあります。
同じ「足が動きにくい」という症状でも、関節由来なのか、神経の障害なのかによって治療方針は大きく異なります。「歳のせい」と決めつけず、まずは動物病院で検査を受けることが重要です。
動物病院での診断の流れ
足腰の不調の原因を探るために、動物病院では次のような検査を行います。
▼問診と歩行観察
ご家庭での様子を伺いながら、診察室で実際に歩く姿や座り方をチェックします。ちょっとしたしぐさが診断のヒントになります。
▼神経学的検査
足先を軽く触って反応を確かめたり、関節を動かして感覚や反射を確認します。神経が正しく働いているかどうかを見極める大切な検査です。
▼画像検査(レントゲン・CT・MRI)
レントゲンでは骨や関節の状態を確認します。神経の病気が疑われるケースなどでは、必要に応じてCTやMRIをご提案することもあります。
▼血液検査
全身の健康状態を把握し、腎臓や肝臓などの内臓の病気が影響していないかを確認します。
このように、いくつかの検査を組み合わせることで「関節の炎症による痛み」なのか「神経の障害」なのかを正しく見極めることが可能になり、改善につながる道が見つかることもあります。
治療とリハビリテーション
診断の結果によって治療方法は変わりますが、代表的なアプローチをご紹介します。
<関節炎の場合>
痛みを和らげるために消炎鎮痛薬やサプリメントを使用します。あわせて体重を適正に保つことで、関節への負担を軽くすることがとても大切です。
<神経疾患の場合>
軽度であれば安静や内科的治療で改善を目指し、症状が進んでいる場合には外科手術が検討されることもあります。
そして、治療と並行して効果を高めるのがリハビリテーションです。
・関節可動域訓練
固くなった関節をゆっくり曲げ伸ばしして、動く範囲を広げてあげます。ストレッチのような運動です。
・バランス訓練
バランスボールやバランスボード、ディスクなどを使い、不安定な状況で立つ練習をします。体を安定させる力を養います。
・水中トレッドミル
水中での歩行訓練を指します。水の浮力を利用することで、陸上よりも歩行しやすく、関節への負担が少ないことが特徴です。
ただし、リハビリを始めたばかりの時期は 「やりすぎ注意」 が鉄則です。人の筋トレと同じで、急に強い負荷をかけると逆効果になることもあります。無理のない範囲からゆっくり継続することが、改善への近道です。
治療もリハビリも、早めに始めてコツコツ続けることで、筋肉の衰えを防ぎ、少しずつ動きやすさを取り戻せる可能性が広がります。
自宅でできる工夫と生活環境の整え方
治療やリハビリと並行して、毎日の生活環境を少し工夫してあげることも大切です。次のような日常の小さな工夫が、愛犬の体への負担を減らすことにつながります。
・床に滑り止めマットを敷く
フローリングは足を滑らせやすく、転倒の原因になるため、マットを敷いてあげることで安心して歩けるようになります。スペースや生活スタイルなどによって設置が難しい場合は、足裏に貼るタイプの滑り止めシールを取り入れるのもおすすめです。
・段差をなくす工夫をする
ソファやベッドの昇り降りが負担になりやすいので、スロープを使って段差をやさしく解消してあげましょう。
・足腰にやさしい寝床を準備する
低反発マットレスなど、体をしっかり支えながら休める寝床は、関節への負担を軽くしてくれます。
・無理のない範囲で散歩やストレッチを続ける
まったく動かさないと筋力が落ちてしまいます。短い距離の散歩や軽いストレッチを習慣にすると、筋肉や関節の動きを保つ助けになります。
こうした環境づくりは、治療やリハビリの効果を後押しするだけでなく、愛犬が毎日を少しでも快適に過ごせるようにするための重要なサポートになります。
まとめ
高齢犬は「関節が曲がらない」「足が動かない」「歩き方に違和感がある」といったトラブルが増えますが、それを単に「歳のせい」と考えてしまうのはとてももったいないことです。
完治が難しい病気もありますが、早期に診断・治療・リハビリを始めることで筋力や柔軟性の低下を防ぎ、愛犬がその子らしく穏やかな毎日を過ごせるようにサポートしていくことができます。
当院では神経学的検査やリハビリテーション指導に力を入れています。愛犬の足腰に不安を感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
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