膀胱腫瘍
症例の概要
膀胱腫瘍(細径内視鏡使用)
膀胱腫瘍は尿を貯める臓器である膀胱から発生する腫瘍をいいます。初期の症状では頻尿、血尿などがみられ、腫瘍が大きくなると尿路閉塞や腫瘍の悪性度によっては他臓器に転移、浸潤がみられることがあります。犬の膀胱腫瘍は悪性であることが多く、移行上皮癌と呼ばれる癌が多く発生します。この癌は浸潤性(癌が近くの組織に広がること)が強く、粘膜面限局のものから筋層まで浸潤するものもあります。進行すると手術不適応になることが少なくなく、その場合、抗がん剤や抗炎症剤による緩和的治療になることがほとんどであるため、早期の治療が重要となります。
経過および検査
超音波検査で認められた膀胱腫瘍
ウェルシュ・コーギー 去勢雄 10歳
尿漏れを主訴に来院。既往として膀胱結石あり。超音波検査にて膀胱内に2cm大の腫瘤病変を認めました。細径内視鏡を用いた組織生検を行い、病理検査、遺伝子検査から移行上皮癌と診断されました。
細径内視鏡下での生検
膀胱腫瘍は腫瘍播種のリスクから超音波検査ガイド下での針生検が推奨されておらず、尿道カテーテルを用いての吸引生検が一般的となっています。しかしカテーテルでは小さな腫瘍を採取できないことや炎症を起こした細胞表面を採取してしまうことで検査に支障が出ることがあります。体長によっては使用できない問題点もありますが、今回のように細径内視鏡を使用できる症例においては、確実に生検できることや手術を実施する際にも内側から切除範囲を決定できるため、非常に有用です。
治療
動画:尿道から膀胱を全て剝離し取り出すところ(上記とは別の症例です)
移行上皮癌の治療は大きく分けると外科療法と内科療法に分けられます。腫瘍の部位や進行度合いにもよりますが、根治を目指すには外科療法である膀胱全摘出術と尿管移設術を行い、腫瘍化した組織を完全に切除します。膀胱には腎臓からの尿の通り道である尿管が繋がっており、膀胱全摘出の際に残された尿管は尿道や腹壁に繋げることで尿の通り道を作ります。しかし、常に尿が垂れ流しの状態になってしまうことから厳重な管理が必要となります。
摘出された膀胱
内科療法では抗がん剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、分子標的薬などを組み合わせて選択します。いずれの薬剤も根治は難しいですが、進行を遅らせることが期待できます。
また尿道閉塞を予防する尿道カテーテルの設置なども併用して行っていきます。
獣医師のコメント


当院では通常の消化管異物に使用する直径約9㎜と5.5㎜の内視鏡の他に、直径約3mmの細径内視鏡の3種類を準備しております。この細径内視鏡は膀胱鏡としての役割だけでなく、鼻腔や気管内異物、気管支肺胞洗浄などの呼吸器疾患の検査、治療にも使用できます。