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犬の膝蓋骨脱臼について~スキップをしたら要注意~

病院コラム 2023.09.01

膝蓋骨(パテラ)脱臼はいわゆる膝のお皿が外れてしまう病気です。突然足を挙げてスキップしてしまったり、お散歩の途中で足を伸ばしたりする場合はパテラが原因かもしれません。今回はそんな膝蓋骨(パテラ)脱臼について、詳しく解説していきます。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主が気を付けるべき点
6.まとめ

原因


まず、膝蓋骨脱臼は内方脱臼外方脱臼の主に2種類に分けられます。
内方脱臼の方が一般的ではありますが、外方脱臼もまれにみられます。
外方脱臼は小型犬よりも大型犬で多く、内方脱臼よりも痛みが強く出やすいのが特徴です。
いずれの場合も膝蓋骨のはまる溝(滑車溝)が浅い、骨が曲がっているなどの要因で発症します。なお、まれに猫でも脱臼することがありますが、犬ほど一般的ではありません。

また、犬の膝蓋骨脱臼の原因には、先天性のものと後天性のものがあり、先天性のものは、生まれつき膝関節に関わる筋肉や骨になんらかの問題があり、成長とともに症状が顕在化してきます。
一方、後天性のものは高所からの落下や足を滑らせることによる転倒、交通事故などによる外傷が原因で起こります。

■膝蓋骨脱臼の重症度分類

グレード 状態
膝蓋骨を触診で簡単に外すことができるものの、手を離すと元の位置に戻る。
膝の曲げ伸ばしだけで膝蓋骨が外れる。
膝蓋骨が常に外れている状態だが、手で押すと元の位置に戻る。
膝蓋骨が常に外れている状態で、手で押しても元の位置に戻らない。

症状


膝蓋骨脱臼は、脱臼の重症度に応じてグレード分けがされています。初期の段階では痛みなどの症状がみられないことも多く、飼い主さんが気が付かないケースも珍しくありません。
しかし、進行すると後ろ足を痛がったり、歩行異常がみられたりするようになります。歩行異常の多くは突然スキップをしたり、足を挙げたり、伸ばしたりしますが、最悪の場合、足が挙げっぱなしの状態になってしまったり、うまく足をつくことができなくなったりすることもあります。

また、慢性的な脱臼は膝関節に過剰なストレスがかかり、将来的に前十字断裂などを引き起こす可能性もあります。

加えて、肥満の場合は症状の悪化を招いてしまうため、注意が必要です。

 

診断方法


膝蓋骨脱臼は触診して膝蓋骨の脱臼を確認することで診断します。また、さらに詳しく診るために、歩行検査を行って歩様の状態を確認したり、レントゲン検査を行って膝関節の状態を確認したりします。レントゲン検査では一方向ではなく、様々な角度から撮影することで詳細に評価を行います。
膝蓋骨脱臼でみられる歩き方の異常などの症状は他の整形疾患でもみられることがあるため、正確に検査を行い、診断を下すことが重要です。

当院での診察の流れや医療機器についてはこちらをご覧ください

 

治療方法


膝蓋骨脱臼の治療法には手術による外科的治療と、薬などによる保存的治療があります。グレード1で症状がない場合は保存的治療を推奨していますが、グレード2以上の場合は手術による治療が基本です。ただし、グレード2以上でも痛みなどの症状がない、なんらかの事情で手術ができない、たまにしか脱臼せず症状が軽いような場合には、飼い主さんと相談の上、手術ではなく体重管理や痛み止めの処方などの保存的治療を選択することもあります。

なお、当院では膝蓋骨脱臼の治療において、滑車溝造溝術、外側関節包および外側支帯の縫縮術、縫工筋転移術、脛骨粗面転移術などの術式を組み合わせて手術を実施しています。

膝蓋骨脱臼の手術についてのご相談がある場合は、当院までご連絡ください。

 

予防法や飼い主が気をつけるべき点


先天的な膝蓋骨脱臼は予防が難しいものの、重症化を防いだり、後天的な膝蓋骨脱臼をある程度予防したりすることはできます。

まず、膝に負担がかからないよう、肥満を防止することが大切です。日頃からおやつの与えすぎには気をつけ、適度な運動を心がけるようにしましょう。

また、フローリングにはマットなどを敷く足裏の毛はこまめにカットするなどをして、愛犬が滑って膝に負担をかけないよう気をつけましょう。

加えて、後ろ足だけでのジャンプや、飼い主さんを引っ張りながらの散歩、急ターンを伴う激しい運動(滑りやすいフローリングを行き来する、狭い空間を行き来するボール遊びをするなど)といった行動が膝蓋骨脱臼の原因になることもあります。膝蓋骨脱臼の原因となる行動はしつけトレーニングで改善することが可能な場合もありますので、愛犬のそういった行動にお悩みの方は当院までご相談ください。

当院で開催しているしつけ方教室についてはこちらをご覧ください

 

まとめ


犬の膝蓋骨脱臼は体重管理をしたり、生活面を工夫したりすることで症状の悪化や発症をある程度予防することができます。また、発見や治療が遅れると最悪の場合、軟骨の損傷や靭帯の断裂など脱臼以外の痛みの原因を作ってしまい、一度関節炎が起こってしまうと完全に痛みを取り除くのが難しくなることもあるため、日頃からよく愛犬の歩き方などを確認して、なにかおかしいと感じたらすぐに検査を受けるようにしましょう

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