猫の慢性腎臓病について┃中高齢の猫は特に注意
病院コラム 2024.01.29
慢性腎臓病とは、腎臓の機能が低下した状態、あるいは腎臓の障害を示す所見が長期(3カ月以上)にわたって続く状態のことです。似たような病気に急性腎不全が挙げられますが、こちらは早めに対処すれば腎機能の回復が期待できるのに対して、慢性腎臓病は進行性で根治が見込めないという違いがあります。
今回は猫の慢性腎臓病について、原因や症状とともに、当院での診断・治療法に関して解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.日常での注意事項と予防法
6.まとめ
原因
慢性腎臓病は、発症原因は明確になっていないものの、中高齢の猫で多くみられます。基本的には加齢による腎機能の低下がきっかけとなりますが、その他に尿石症などの泌尿器の病気が影響した、二次的なものも原因として考えられます。
また、まれではありますが先天的な腎臓の奇形によって発症することもあります。
症状
慢性腎臓病は腎臓の障害の程度によって、その症状はさまざまです。
初期であれば、腎臓に軽い障害があっても症状として現れませんが、次第に食欲・元気がなくなる、体重が減る、毛艶が悪くなるといった様子がみられます。また、多飲多尿や嘔吐、下痢などの症状も認められるようになります。
末期では尿毒症と呼ばれる状態になり、けいれんや神経過敏といった神経症状が現れることもあります。
診断
正確に診断するには、血液検査や尿検査、血圧測定のほか、腎臓の超音波検査などを実施して、総合的に判断する必要があります。
・血液検査
血液検査では、BUNやクレアチニン(腎臓の機能を表す数値)、各種ミネラル(リン、ナトリウム、カリウム、クロール)などを主に調べます。BUNとクレアチニンの数値は、腎臓の状態を把握する上で大切ですが、これらは腎臓が7割ほど障害がみられないと異常値として測定できないため、最近ではより早期に腎障害を発見できる項目として、SDMAというものが注目されています。
・尿検査
尿比重(尿が濃縮されているのか希釈されているのかを調べる項目)や、尿タンパクの有無を確認します。
・血圧測定
全身の高血圧がみられる場合があります。
・超音波検査
腎臓の大きさや状態を観察することで、他の腎臓の病気と区別します。
治療
慢性腎臓病の治療は、腎障害の進行をできるだけ遅らせることが重要です。
具体的に、脱水がみられる場合には輸液(点滴)をしたり、血圧が高い場合には血圧を下げる薬を投与したり、尿タンパクが認められる場合には降圧剤(ARBやACEIなど)を投与したりします。
また、尿石症など他の病気がある場合にはその治療も始めます。
これらに加え、ある程度症状がみられる場合には、腎臓病用の療法食によって食事中のリンを制限します。その際の注意点として、不用意に療法食による治療を始めてしまうと猫にとって悪影響を及ぼす可能性もあるため、当院では初期の慢性腎臓病と思われるケースでは、FGF23という数値を測定してから治療を開始しています。
FGF23とは、血液中のリン濃度の上昇と関連していることがわかっているため、食事療法のタイミングを決める要素の1つになります。
日常での注意事項と予防法
慢性腎臓病は進行性の病気なので、なるべく早期に発見して進行を遅らせることが肝心です。
しかし、初期には症状がみられない場合もあるため、特に中高齢にさしかかったら定期的に動物病院を受診し、血液検査や尿検査を行い腎臓の状態をチェックすることをお勧めします。
まとめ
慢性腎臓病は、どんな猫でも年齢を重ねていくとかかりうる病気です。元気そうに見えても、早期発見・早期治療のために定期的な健康診断を受けることをおすすめします。
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