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【よく食べるのに痩せる?】高齢の猫に多い甲状腺機能亢進症|症状と治療法

病院コラム 2026.03.19

「最近よく食べているのに、なぜか痩せてきた気がする」
「元気そうだけれど、体重が減っている…」

このような変化に気づいたことはありませんか?

中高齢の猫で増えてくる代表的な病気のひとつが「甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)」です。食欲があり、活動的に見えることも多いため「元気だから大丈夫」と見過ごされやすいのが特徴です。

今回は、気をつけたい症状のポイントや、診断の方法、治療の選択肢、さらに余命や治療費の目安について、詳しく解説していきます。

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■目次
1.こんな変化は要注意|飼い主様が気づきやすい初期症状
2.猫の甲状腺機能亢進症とは|中高齢の猫で多い病気
3.診断方法と治療の考え方
4.よくあるご質問(FAQ)|余命・治療費・生活への影響
5.まとめ|早期発見のために中高齢期の健康チェックを

 

こんな変化は要注意|飼い主様が気づきやすい初期症状


甲状腺機能亢進症でよくみられる症状は、次のようなものです。

よく食べるのに痩せる(特に筋肉量の低下)
体重減少があるのに元気に見える
多飲多尿(お水をよく飲み、トイレの回数が増える)
よく鳴く、落ち着きがなくなる
攻撃的になる
活動量が増える

特に「よく食べるのに痩せる」という変化は、甲状腺機能亢進症を疑う代表的なサインです。この病気では、代謝が過剰に高まることで、体がエネルギーをどんどん消費してしまい、筋肉量が落ちていきます。

一見すると元気に見えることもありますが、体の中では負担がかかっている可能性があるため、こうした変化を見逃さないことが大切です。

 

猫の甲状腺機能亢進症とは|中高齢の猫で多い病気


甲状腺は首のあたりにある小さな器官で、体のエネルギーの使い方を調整する「甲状腺ホルモン」を分泌しています。このホルモンは、本来であれば体の働きを適切なバランスに保つ役割を担っています。

甲状腺機能亢進症は、そのホルモンが必要以上に多く分泌されてしまう病気です。ホルモンが過剰になることで、全身の代謝が活発になりすぎ、体にさまざまな変化があらわれます。

アメリカの報告では、10歳以上の猫のおよそ10%が発症するとされており、中高齢の猫では決して珍しい病気ではありません。日本でも高齢化が進むにつれ、診断される機会が増えています。

原因は完全には解明されていませんが、加齢を背景に、甲状腺の細胞が増殖して大きくなる「良性の過形成」が起こり、その結果ホルモンが過剰に分泌されるケースが多いと考えられています。食事や生活環境などの関与も示唆されていますが、はっきりとした因果関係はまだ分かっていません。

放置した場合のリスク

初期のうちは「よく食べる元気な高齢猫」に見えることもありますが、体の中では負担が蓄積していきます。甲状腺機能亢進症は放置すると、

心筋症
胸水・肺水腫
全身性高血圧

などを併発することがあります。特に高血圧は外からは分かりにくく、気づいたときには臓器に影響が出ていることもあるため注意が必要です。

猫の肥大型心筋症についてはこちらで詳しく解説しています

一方で、この病気は早期に発見し、適切に治療を行えばコントロールできるケースが多い疾患でもあります。だからこそ「少し気になる」段階での検査が重要になります。

 

診断方法と治療の考え方


甲状腺機能亢進症が疑われる場合は「本当にこの病気かどうか」を確認することと「体にどのくらい影響が出ているか」を把握することが大切です。そのうえで、その子の状態に合った治療方法を一緒に選んでいきます。

診断の流れ

診察では、まず首のあたりをやさしく触診し、甲状腺が大きくなっていないかを確認します。甲状腺が腫れている場合、ゴロゴロとしたしこりのような感触として触れることがあります。ただし、すべての猫で明確に触れるわけではありません。

確定診断には、血液検査で甲状腺ホルモン(T4)の値を測定します。T4が基準値より高い場合、甲状腺機能亢進症が強く疑われます。

さらに必要に応じて、

超音波検査で甲状腺の大きさや状態を確認する
心臓や血圧の検査を追加する

など、その子の状態に合わせて評価を進めていきます。

単に「ホルモンの値を見る」だけでなく、全身への影響が出ていないかをあわせて確認することが大切です。

治療の選択肢

甲状腺機能亢進症の治療には、主に3つの方法があります。その子の年齢や体調、生活スタイルを踏まえて選択していきます。

① 飲み薬による治療(抗甲状腺薬)
もっとも一般的なのが、チアマゾールを含む飲み薬による治療です。この薬は、甲状腺ホルモンの合成を抑えることで、過剰な代謝状態をコントロールします。

多くの猫で内科治療により安定した状態を保つことが可能ですが、嘔吐などの消化器症状やまれに重い副作用が起こることもあるため、投薬開始後は定期的な血液検査が欠かせません。血液検査でT4の値を確認しながら、薬の量を細かく調整していきます。

「薬を出して終わり」ではなく、継続的なフォローが治療の大切な一部になります。

② 食事療法(ヨウ素制限食)
甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素を制限した療法食を用いる方法です。薬を使わずに管理できる可能性がある点が特徴です。

ただし、この方法は“そのフードのみ”を継続して食べることが前提になります。猫によっては好みに合わない場合もあるため、実際に続けられるかどうかを慎重に判断します。

③ 手術(甲状腺摘出術)
内科治療で十分にコントロールできない場合や、他の条件が整っている場合には、甲状腺を摘出する手術を検討します。

根本的な治療になり得る一方で、術後の低カルシウム血症や、甲状腺機能低下症といった合併症のリスクもあるため、慎重な術後管理が必要です。

甲状腺機能亢進症は、適切に管理すれば長く安定した生活を送れる可能性がある病気です。そのためにも「どの治療がその子に合っているのか」を丁寧に見極めることが重要になります。

 

よくあるご質問(FAQ)|余命・治療費・生活への影響


Q. 余命は短くなってしまいますか?
早期に診断し、適切な治療を行うことで、長く安定した生活を送れる例も多くあります。一方で、合併症が進行している場合は注意が必要なため、まずは早めの検査が大切です。

Q. 治療は一生続きますか?
内科治療(飲み薬や食事療法)の場合、基本的には長期的な管理が必要になります。ただし、状態が安定していればお薬の量を調整したり、その子の体調に合わせて治療内容を見直すこともあります。

Q. 治療費はどのくらいかかりますか?
検査内容や治療方法によって異なります。治療を始める前に、想定される費用の目安についてご説明いたしますので、ご不安な点は遠慮なくお尋ねください。

 

まとめ|早期発見のために中高齢期の健康チェックを


甲状腺機能亢進症は、中高齢の猫で比較的多くみられる病気です。「よく食べるのに痩せる」「元気そうなのに体重が減る」といった変化は、年齢のせいと見過ごされがちですが、大切なサインである可能性があります。

中高齢期に入ったら、定期的な健康診断で甲状腺ホルモン(T4)の値を確認することも、安心につながる方法のひとつです。早い段階で気づき、適切な治療を始めることで、安定した生活を維持できるケースも多くあります。

健康診断の頻度と考え方についてはこちらで詳しく解説しています

「うちの子、少し当てはまるかも?」そんな小さな気づきがあれば、どうぞ早めにご相談ください。

 

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