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猫の甲状腺機能亢進症について┃高齢の猫に多い病気

病院コラム 2023.12.15

甲状腺は喉の近くにある器官で、代謝に関わる甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺機能亢進症とは、そのホルモンが過剰に産生される病気で、中高齢の猫でよく起こることが知られています。その症状は特徴的で、食欲があるのに痩せてきたり、攻撃的になったりしたら要注意です。一見すると病気とは思えないので見逃されがちですが、早期に発見して治療を開始できれば、病気の悪化を防ぐこともできます。
今回は、猫の甲状腺機能亢進症について、原因や症状とともに当院での治療方針などを解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

原因


アメリカでは10歳以上の猫の約10%が甲状腺機能亢進症ともいわれており、中高齢の猫ではとても一般的な病気です。

その原因は明らかになっていませんが、加齢や食事内容、飼育環境といった要素が関係しているといわれています。これらの要素によって良性の過形成(甲状腺細胞が増殖して甲状腺が大きくなること)が生じ、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されることで発症します。

 

症状


甲状腺機能亢進症に典型的な症状として、食欲の増加や体重の減少(特に筋肉量の低下)がみられます。これがいわゆる「よく食べるのに痩せる」状態です。
その他には、多飲多尿、攻撃的になる、よく鳴くといった症状も現れます。また、甲状腺機能亢進症の猫では心筋症を発症することが多く、胸水や肺水腫など重症になると呼吸状態が悪くなることもあります。
さらに、症状としては見極めづらいものの、全身性の高血圧を併発することもあります。

 

診断


まずは実際に猫に触って、甲状腺が腫れていないかを確認します。甲状腺は首の部分にあり、大きく腫れていればゴロゴロとしたものが触診できます。

また、血液検査により甲状腺ホルモン(T4)を測定することで診断します。その他に、超音波検査を併用することもあります。

 

治療


甲状腺機能亢進症の治療には、薬(抗甲状腺薬)、食事療法(ヨウ素制限食)、手術といった3つの選択肢があります。

抗甲状腺薬はチアマゾールという成分を含み、甲状腺ホルモンの合成を妨げる役割を担います。副作用として嘔吐などの消化器症状が起こる可能性もあるので、投薬開始後はご家庭で様子をみていただくのと同時に定期的に来院いただき、血液検査を実施して、副作用が出ていないかやT4の値の変化を確認し、投与量を調整する必要があります。

ヨウ素制限食は、甲状腺ホルモンの元となるヨウ素を少なくしたフードで、副作用を最小限に抑えることができます。ただし、猫によっては味が好みではなく進んで食べない子もいるので、ご家庭ではきちんと食べているかをチェックする必要があります。

上記2つでコントロールできるケースが多いものの、これらの治療がうまくいかない場合は手術を検討します(甲状腺摘出術)。術後には医原性の低カルシウム血症あるいは甲状腺機能低下症が発生する可能性があるため、注意が必要です。

 

予防法やご家庭での注意点


「よく食べるのに痩せる」症状は元気な状態と勘違いしてしまうことが多いのですが、甲状腺機能亢進症の可能性もあるということを知っておくことが大切です。

あわせて、お水を飲む量やトイレの回数を確認する、日ごろから体重のチェックをすることも、健康を維持する上で重要です。しかし、気づかないうちに病気が進行している可能性もあるため、中高齢に差し掛かったら健康診断で甲状腺ホルモンの数値を確認すると、より安心でしょう。

 

まとめ


甲状腺機能亢進症は中高齢の猫に多い病気の1つです。甲状腺ホルモンの数値が診断に直結するので、早期に診断して治療を開始するためにも、積極的に健康診断を受診しましょう。

※初めて受診される方は事前に問診票を記載の上ご来院ください
問診票のダウンロードはこちらから

 

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