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猫の尿路結石症について┃水分摂取不足が原因かも

病院コラム 2024.04.26

尿路結石症とは、様々な理由で尿路(腎臓から尿道まで続く尿の排泄路)に石がたまってしまう泌尿器の病気で、猫でよく遭遇します。一般的には冬に多いともいわれていますが、これからの暑い季節でもよくみられるので、注意が必要です。
今回は猫の尿路結石症について、その原因や症状をお伝えしたうえで、ご家庭で実践できる予防法に関してもお伝えします。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.日常での注意事項と予防法
6.まとめ

 

原因


尿路結石症は以下のようなことが原因で発症します。

食事に過剰なミネラルが含まれる
尿の排泄量や回数が少なくなる
尿路に細菌が感染する
ストレスを感じる  など

一般的には、秋から冬にかけて水を飲む量が減り、あまり動かなくなることから発生が多くなるといわれていますが、室内飼いの子が多くなり、夏も冷房が効いた涼しい部屋にいるため通年で発生し得る病気です。

結石にはいくつかの種類がありますが、代表的なものは以下の2つになります。
ストルバイト(食事管理で溶かせる)
シュウ酸カルシウム(食事管理では溶かせない)

発生率としては半々程度にみられる印象です。

 

症状


結石の大きさやたまる場所によって様々ですが、以下のような症状がみられます。

トイレに行く回数が増える(頻尿)
排尿姿勢をとるが尿が出ない
尿が赤くなる、あるいは濁る
いつもと違う臭いがする

尿管閉塞や尿道閉塞をしている子では、急性腎不全による嘔吐や意識状態の低下など命に関わる危険な状態になることもあります

尿道閉塞はメスに比べオスで多く、尿道が細く長いため詰まりやすいです。

 

診断


尿路結石症は超音波検査、レントゲン検査、尿検査などで診断します。

触診で腎臓や膀胱がパンパンに触れる場合は、尿管もしくは尿道閉塞が強く疑われるため、緊急処置が必要です。

 

治療


治療には内科療法と外科療法がありますが、まずは内科療法から始めることが多いです。細菌感染や尿道の腫れ具合によって抗生剤やステロイド、利尿剤などを使っていきます。

また、pHやミネラルが調整された尿路結石症用のフードを与える食事療法も行います。この際、治療効果を最大限発揮させるために、普段の食事と混ぜないようにすることが大切です。

・血尿や頻尿など臨床症状の再発を繰り返す
・尿道閉塞を繰り返す
・慢性的な尿道の炎症で尿道狭窄を起こしている

など理由は様々ですが、外科的な介入が必要になるケースは少なくありません。

あわせて、シュウ酸カルシウムによる結石はその性質上、お薬や療法食による治療が期待できないため、手術による治療が第一選択になりますが、結石を摘出しても再発するケースもあり、術後も注意が必要です。

なお、当院では膀胱結石の手術の際には腹腔鏡を用いております。結石の大きさにもよりますが、傷口は1cm程度で行えるのと、細かい結石や尿道まで確認できるため、取り残しによる再発を防ぐことができます。

また猫では、太さ的に適応できるケースは少ないものの、膀胱鏡(最小径の内視鏡)も完備しているため、尿道や膀胱に尿石以外のトラブルがないかも確認することができます。

 

日常での注意事項と予防法


尿路結石症の予防に一番重要なことは、新鮮な水を常に飲める状態にしておき、十分な量の水を飲ませることです。食事から水分を補充するために、ドライフードではなく缶詰などのウエットフードを与えることや、ドライフードをお湯でふやかすことも効果的です。

さらに、猫ではトイレの工夫も重要です。トイレは最低でも猫の頭数プラス1台用意し、トイレは常に清潔に保つことも意識してみましょう。その際、トイレの形状や砂の材質なども猫が気に入ってくれるものを探してみると、よりよいでしょう。

 

まとめ


尿路結石症は寒い時期だけでなく、これからの季節でも注意が必要な病気です。また、尿道閉塞にまで至ってしまうと数日のうちに危険な状態に陥ってしまうため、日ごろから水分摂取を心がけるとともに、気になることがあれば早めに動物病院を受診しましょう。

 

※初めて受診される方は事前に問診票を記載の上ご来院ください
問診票のダウンロードはこちらから

 

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