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犬の股関節形成不全について┃大型犬だけでなく小型犬でも起こりうる病気

病院コラム 2024.02.26

股関節形成不全は、一般的に大型犬に多いと聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、パグやシーズー、コーギーなど大型犬以外にも実はよく発症する病気です。股関節の発育性の形成異常が原因で関節が不安定になり、結果的に骨関節炎を起こしてしまいます。また根治的な治療は手術になりますが、成長期にしか行えないものや大型犬では行えないものなどもあります。そのため、関節の状態や症状をよく見極めて飼い主様とご相談したうえで、方針を定める必要があります。
今回は股関節形成不全について、その原因や症状とともに、治療法やご家庭での注意点をお伝えします。
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■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

原因


犬の股関節形成不全は、「遺伝」と「環境」が主要因となっていると考えられていますが、まだ解明されていない部分もあります。

親が発症している場合は子もなる可能性が高く、両親が発症している場合、正常な股関節を持つ子が生まれる確率は7%との報告もあります。

一方で環境要因として、肥満による股関節への過剰な負荷や急激な体重増加、激しい運動、滑る床、階段の上り下りなども発症に関与する可能性があります。

また、片側だけの場合もあれば、両側ともみられる場合もあります。

 

症状


症状は、成長期に生じるものと成熟後に再度生じるものがあります。

成長期では、股関節の緩みによる症状がでます。腰を揺らすような歩き方(モンローウォーク)や、両方の後ろ足でぴょんぴょんとうさぎのように跳ねる歩き方などがみられます。それ以外にも関節や靭帯の炎症により、お散歩を嫌がる、ジャンプできない、すぐ座りたがるなどの様子がみられることがあります。

これらの異常は、成長と共に関節が再構築されることで、一旦関節が安定化してしまい症状が緩和されたり、症状がなくなったりしますがこれは治ったわけではありません

今度は成熟後に、骨関節炎による痛みが出てきます。関節を動かせる範囲(関節の可動域)が制限されてしまい、足の筋肉が落ち散歩を嫌がるなどの症状が再度出てきます。

 

診断


股関節形成不全がある子でも上記の症状がない子は多くいます。しかし骨格的な異常はあるため膝や腰に異常な負荷が慢性的にかかってしまい、股関節脱臼や前十字靭帯断裂、馬尾症候群などを起こしてしまう子はいます。

痛みの原因が本当に股関節形成不全によるものかどうかは、整形外科学的検査や神経学的検査、画像検査などを組み合わせて総合的に判断します。
特に若い犬では、バーデン試験オルトラニー試験という検査を実施して股関節の緩みを見つけ出します。

 

治療


股関節形成不全の治療は、保存療法外科療法に分けられます。

保存療法では、サプリメントや消炎鎮痛剤などを投与し炎症を抑えるとともに、体重を増やさないように食事内容を管理したり、運動を制限したりします。

外科療法として、若齢期恥骨結合固定術、二点または三点骨盤骨切り術(成長期のみ)、股関節全置換術、大腿骨頭切除術などを行います。

 

予防法やご家庭での注意点


遺伝が発症に関わるといわれているので、むやみに繁殖させないことが重要です。

また、肥満は股関節だけではなく、膝関節などの歩行に重要な関節に大きな負担となるため、食生活に気を配り適度な運動を意識してみましょう

加えてご家庭で、滑りやすい床にはマットを敷く、段差にスロープを準備するなどの対策も効果的です。

 

まとめ


股関節形成不全は遺伝や環境が複雑に絡んで発症する病気です。また、股関節形成不全があっても必ず症状が出るわけではありませんので、痛みの箇所や原因をしっかり診断することが大切です。また、日頃から愛犬の様子をしっかりと観察し、動物病院で定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期治療が可能となります。

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