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猫の肥大型心筋症について┃突然亡くなってしまうケースもある

病院コラム 2024.03.28

肥大型心筋症とは中高齢の猫によく起こる心臓の病気です。心筋症はいくつかのタイプ分類がありますが、肥大型が最も多く、若齢でも罹患している可能性はあります。初期は特に症状がありませんが、進行すると呼吸が苦しくなり、疲れやすくなります。また突然死のリスクもあります。そのため、早期発見し症状に合わせた治療が必要になります。
今回は猫の肥大型心筋症について、原因やよくみられる症状とともに、診断・治療法に関してもお伝えします。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.ご家庭での注意点や予防法
6.まとめ

 

原因


心臓は4つの空間(右心室、左心室、右心房、左心房)に分かれており、血液を全身に送るポンプの役割を担っています。

肥大型心筋症とは、左心室の筋肉が厚く肥大し、うまく全身に血液がめぐらなくなる病気です。なお、中高齢の猫に一般的です。海外においてはラグドール、メインクーンの遺伝子変異が特定されており、変異がある子はより罹患リスクが高いとされています。しかし未だ不明な点が多いのが現状です。

その他に、甲状腺機能亢進症や全身性の高血圧など、他の病気に続いて発症する場合もあります。

◼️甲状腺機能亢進症についてはこちらで詳しく解説しています
猫の甲状腺機能亢進症について┃高齢の猫に多い病気

 

症状


心筋が肥大すると心室の空間が広がりにくくなるため、血液を送り出すというポンプ機能が損なわれ、血液がうっ滞することで様々な症状が現れます。

呼吸が速くなる(頻呼吸)
口を開けて苦しそうに呼吸する
動きたがらない

病態が進行すると失神やうっ血性心不全(肺水腫、胸水貯留)、動脈血栓塞栓症(急に後肢が動かなくなり痛がる)を起こすこともあります

一方で、心筋が肥大していてもこうした症状が現れず、問題なく生活していることもあります。

 

診断


肥大型心筋症の診断には、画像検査が必要不可欠です。

まずは心臓の音を聞き、その後胸部のX線検査や心臓の超音波検査を実施します。
X線検査では、「バレンタインハート」という心房が膨らんだ特徴的な像がみられることがあります。
心臓の超音波検査では、心臓の形や血流、心室の壁の厚み、心室・心房の広さなどを細かくチェックします。この中で特に左心室の壁の厚みは診断のポイントとなります。

その他にも、慢性腎臓病による高血圧、あるいは甲状腺機能亢進症によって引き起こされるケースもあるため、それらを確かめるために血液検査や心電図検査、血圧測定を行います。

 

治療


現在のところ、内科治療(投薬治療)のみになります。
左心房の大きさが正常で無症状の場合には、治療は必要なく定期的な経過観察とします。左心房が大きく膨らみ動脈血栓症や不整脈のリスクがある場合には、血栓を防ぐお薬や不整脈を改善するお薬を処方します。

もっと状態が悪くなって心不全や動脈血栓症をすでに発症している場合には、利尿薬や心不全の治療薬の投与、酸素吸入を行います。

 

ご家庭での注意点や予防法


肥大型心筋症は中高齢に多い病気のため、若いころは元気でも、歳を重ねると急に発症してしまう危険性があります
特にこの病気は初期に症状として現れないこともあるため、積極的に健康診断を利用して、早期発見に努めましょう

あわせて、中高齢になると腎臓の機能が低下して血圧が上がりやすいので、慢性腎臓病などを持病にもつ場合には注意が必要です。

◼️慢性腎臓についてはこちらで詳しく解説しています
猫の慢性腎臓病について┃中高齢の猫は特に注意

 

まとめ


肥大型心筋症は早期発見・早期治療がポイントになります。症状がないからといって油断せずに、定期的に健康診断を受けましょう。

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