【獣医師解説】犬の動脈管開存症(PDA)|子犬の疲れやすさ・成長不良・心雑音の原因に
病院コラム 2025.11.13
「なんだか成長が遅い気がする」「子犬なのにすぐ疲れてしまう」──そのようなご相談を受けることがあります。
心臓の病気というと高齢の犬を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、なかには生まれつき起こる先天性心疾患もあります。そのひとつが「動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう/PDA:Patent Ductus Arteriosus)」です。この病気は放置すると命に関わることもありますが、手術によって根治が期待できる数少ない心臓病として知られています。
今回は、犬の動脈管開存症について、症状や検査・治療の流れ、そして当院での取り組みをご紹介します。

■目次
1.動脈管開存症(PDA)とは|子犬に多い先天性の心臓病
2.診断の流れ
3.治療方法|手術で根治が期待できる数少ない心疾患
4.まとめ
動脈管開存症(PDA)とは|子犬に多い先天性の心臓病
動脈管開存症は、心臓から全身へ血液を送る大動脈と、肺へ送る肺動脈をつなぐ「動脈管」という血管が、出生後に閉じずに開いたままになっている病気です。
動脈管は本来、胎内で肺を通らずに血液を全身へ送るための通り道として働き、生まれた直後に自然に閉鎖する仕組みになっています。しかし、この管が閉じずに残ると、大動脈から肺動脈へ血液が逆流し、左心房や左心室に過剰な負担がかかります。その結果、うっ血性心不全・肺水腫・肺高血圧症などの合併症を起こし、命に関わることもあります。
ポメラニアン、トイ・プードル、マルチーズなどの小型犬に多く見られる先天性疾患で、一般的には1歳未満で発見されますが、症状が軽い場合は成犬になるまで気づかれないこともあります。
<早期発見のきっかけは「聴診」>
動脈管開存症の初期は、目立った症状が出にくく気づかれにくいのが特徴です。病気が進行すると、次のような症状が見られます。
・成長が遅い(成長不良)
・疲れやすい
・元気がない
・動きたがらない
・突然倒れる(失神)
また、聴診では「連続性雑音(心臓の収縮から拡張の間ずっと続く雑音)」と呼ばれる特徴的な心雑音が聞かれます。この心雑音が、ワクチン接種や健康診断の際の聴診で偶然見つかるケースも少なくありません。
初期は無症状のことも多いため、子犬のうちから定期的に健康診断を受けることが早期発見につながります。元気に見えても「安心のためのチェック」を続けることが、将来の健康を守る第一歩です。
診断の流れ
診断の第一歩は聴診です。特徴的な連続性雑音の有無を確認したうえで、以下のような検査を組み合わせて診断を確定します。
・心エコー検査(超音波検査):動脈管の状態や血液の流れ、心臓の動きを確認します
・胸部レントゲン検査:心臓の大きさや形、肺のうっ血の有無を調べます
・血液検査・心電図検査:全身状態や心機能を把握します
これらの検査結果を総合的に評価し、外科手術が可能かどうか・どの方法が最適かを判断します。
治療方法|手術で根治が期待できる数少ない心疾患
犬の心臓病の多くはお薬で症状の進行を抑える「内科的治療」が中心ですが、動脈管開存症(PDA)は外科的治療によって根治が期待できる、数少ない心臓病のひとつです。
お薬だけで進行を止めることは難しいため、できるだけ早期(数か月齢)の手術が推奨されます。早期に治療を行うことで、心臓への負担を最小限に抑え、健康な生活を取り戻せる可能性が高まります。
<外科治療の選択肢>
動脈管開存症の手術には、犬の状態や心臓への負担を考慮して、以下の方法が選択されます。
・動脈管結紮術(けっさつじゅつ)
動脈管を糸でしばり、血液の流れを止める方法です。当院ではこの術式を採用しております。なお、手術に際しては出血や気胸、心停止などの合併症が起こることもあります。
・カテーテル閉鎖術
カテーテルを使って動脈管にコイルなどを埋め込み、血液が流れないようにします。
なお、肺動脈から大動脈へ血液が逆流する「アイゼンメンジャー化」と呼ばれる状態では、手術によって病態が悪化してしまうこともあるため、慎重な判断が必要です。
<成犬で見つかった場合も治療の道はあります>
動脈管開存症は子犬で見つかることが多い病気ですが、成犬になってから判明するケースもあります。その場合も、年齢や心臓の状態を丁寧に評価したうえで、外科治療または内科的サポートを組み合わせて最適な治療方針を検討します。
当院では、外科手術にも対応できる設備と経験を備え、症例ごとに最も負担の少ない方法を慎重に選択しています。術後の経過が良好なケースも多く、手術後は元気に生活できる犬もたくさんいます。
不安な気持ちを抱えたままにせず、まずはご相談ください。状態を丁寧に確認し、その子にとって最善の治療とサポートを一緒に考えていきます。
まとめ
犬の動脈管開存症(PDA)は、放置すると命に関わるリスクがある一方で、手術によって根治が期待できる心臓病です。早期に診断・治療を行うことで、心臓への負担を最小限に抑え、健康を取り戻せる可能性が大きく広がります。
「子犬なのに疲れやすい」「成長が遅い」「健康診断で心雑音を指摘された」そんなときは、どうか様子を見ずにご相談ください。検査で状態をしっかり把握し、その子にとって最善の治療やサポートを一緒に考えていくことが何より大切です。
当院では、外科手術にも対応できる設備と経験を備え、術後のケアまで丁寧にサポートしています。不安なときこそ、専門的な視点から安心できる選択肢をご提案します。
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