愛犬や愛猫の歩き方がおかしい？ ┃考えられる原因と治療法について

病院コラム 2024.09.19

「健脚」という言葉は、人だけでなく犬や猫にも当てはまります。動物が健康で過ごすためには、足腰の健康が重要になります。歩き方の異常は、骨や筋肉の問題だけでなく、神経や全身性の病気によっても引き起こされることがあるため、早期に発見し、動物病院で詳しく検査して原因を突き止めることが大切です。

犬や猫の歩き方がおかしい場合に考えられる原因とその治療法について詳しくお伝えします。

■目次
1.正常な歩行とは
 2.歩き方の異常
 3.歩き方の異常を引き起こす主な原因
 4.診断
 5.治療
 6.ご自宅での注意点
 7.まとめ

正常な歩行とは

通常、静止している時は、四本の足が地面に対して綺麗な長方形を形成しているのが正常な姿勢です。どちらかに傾いていたり、台形のような形になっている場合は、何か問題があるかもしれません。

歩行時においては、頭があまり上下せず、前後左右の足が等間隔に動くのが正常な歩行です。

歩き方の異常

歩き方に異常がある状態を「跛行（はこう）」と呼び、具体的には以下のような様子が見られます。

・足を引きずる
・散歩に行きたがらない
・特定の姿勢を避ける
・ジャンプができない
・階段の上り下りができない

歩き方の異常を引き起こす主な原因

〈整形外科的問題〉

・膝蓋骨脱臼
トイ・プードルなどの小型犬に多く、歩くときに後ろ足が地面に着かないといった症状がみられます。
犬の膝蓋骨脱臼についてはこちらで詳しく解説しています
犬の膝蓋骨脱臼の治療法についてはこちらで詳しく解説しています

・前十字靭帯断裂
急性の場合はケガや事故が原因で、慢性の場合は加齢による靭帯の変性が原因となります。膝蓋骨脱臼に伴って発症することも多くあります。
犬の前十字靭帯断裂についてはこちらで詳しく解説しています
犬の前十字靭帯断裂の治療法についてはこちらで詳しく解説しています

・骨関節炎
高齢の犬や猫に多く見られます。
犬の骨関節炎についてはこちらで詳しく解説しています

・骨折
若い小型犬でよく見られ、高所からの落下や交通事故などが原因です。
犬の橈尺骨骨折についてはこちらで詳しく解説しています

・股関節形成不全
遺伝的要因、偏った栄養により骨が正常に成長しないことや肥満、激しい運動、あるいは滑りやすい床などによる関節への負担といった要因が複雑に関わって発症すると考えられています。一般的には大型犬に多いことが知られています。
犬の股関節形成不全についてはこちらで詳しく解説しています

・レッグペルテス
成長期の小型犬で発症する確率が高い病気です。
犬のレッグ・ペルテスについてはこちらで詳しく解説しています

〈神経学的問題〉

・椎間板ヘルニア
ミニチュア・ダックスフンドでよく見られ、急性のⅠ型と慢性のⅡ型があります。

・馬尾症候群
先天的に起こる場合もあれば、ハンセンⅡ型椎間板ヘルニアなどに伴って後天的に発症することもあります。
犬と猫の馬尾症候群についてはこちらで詳しく解説しています

〈その他の原因〉

・筋肉の損傷や炎症
・爪や肉球のトラブル
・全身性疾患（甲状腺機能低下症など）

診断

歩き方に異常が見られる場合、いつから、どのような状況で、どの程度の異常があるのかを問診で詳しくお聞きし、症状の予測を立てることが重要になります。口頭で伝えにくい場合は、動画を撮影していただくとより正確な診断につながります。

その他、身体検査や画像診断（レントゲン、MRI、CT検査）、血液検査を行い総合的に判断します。

治療

治療法は病気によって異なりますが、主に保存療法と外科的治療に分けられます。

〈保存療法〉

休養と運動制限を行い、患部への負担を軽減します。また、理学療法やリハビリテーションを通じて運動機能の回復を図ります。その他、消炎鎮痛剤などによる薬物療法を試みることもあります。

〈外科的治療〉

それぞれの病気に対して適切な手術を実施します。例えば、前十字靭帯断裂にはTPLO、膝蓋骨脱臼には滑車溝造溝術や脛骨粗面転移術、レッグペルテスには大腿骨頭切除術、椎間板ヘルニアには（小範囲）片側椎弓切除術などが検討されます。

ご自宅での注意点

歩き方に影響を与える病気は幅広く存在するため、まずは定期的な健康診断で全身のチェックをすることが大切です。

それ以外にも、足腰への負担を和らげるための適切な栄養管理や体重管理、生活環境の整備も予防につながります。

まとめ

今回ご紹介した病気や怪我は、いずれも早期発見・早期治療が愛犬・愛猫への負担を軽くするカギになります。片方の足だけ痩せている、歩き出しは跛行しているが少し歩くと普通にしている、このような場合もなにかトラブルを抱えている可能性が高いです。少しでも歩き方がおかしいなと感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。また、ご家庭ではなかなか気が付きにくい小さな変化を見つけ出すためにも、定期的な健康診断をお勧めします。

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